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徹底比較 ダルビッシュ有と田中将大(NPB投手WAR試案)

2004年以降の各球場の得点PF(パークファクター)のデータが整理できたため、早速このデータと
DERによる守備力補正と合わせて、日本時代のダルビッシュ有と田中将大の投球成績を比較したいと思います。
まずは二人の基本成績から。

ダルビッシュ基本

田中基本

ダルビッシュ有は2007年-2011年の間で5年連続防御率1点台を叩き出しました。
粗悪な品質のボールを使っていた戦前戦中を除けば、2014年現在ではNPB史上唯一の記録となっています。
一方で田中将大は、ダルビッシュのキャリアハイを上回る防御率1.27を2度記録。
こちらも戦前戦中を除けば、これより高い防御率を記録した投手は村山実,稲尾和久の二人のみとなっています。
次は二人の投球内容を見ていきます。

田中

田中 - コピー

通算防御率はダルビッシュが0.31ほど上回っています。
奪三振率被本塁打率はダルビッシュ、与四球率では田中に軍配が上がるようです。
このような投球の内容を総合的に評価して防御率を予想する指標であるFIPに目を向けると、通算では田中が0.12ほど上回っています。
ただし、飛ばない統一球(違反球)を使ってプレーした年数がダルビッシュは1年であるのに対し、田中は2年となっています。
防御率とFIPは使用球の影響を受けるので、この点は考慮する必要があるでしょう。
最後に目を引くのは9回あたりの被安打率です。この指標は他と比べて特に大きく差がついています。
次に、RSAAとRSWINを見ていきます。

RSAA田中

RSAA田中 - コピー

avg失点率は「リーグの平均失点率」です。違反球が使用されていた2011年,2012年は大きく値が下がっていることが分かります。
失点率傑出度は「avg失点率÷失点率×100」で算出される傑出度です。値が大きいほど優秀な失点率を記録した、ということです。
RSAAは「リーグの平均的な投手と比べて何点分チームの総失点を減らしたか」を示します。
RSWINは「リーグの平均的な投手と比べて何勝分チームの勝利数を増やしたか」を示します。
1点の価値は年毎に異なるため、RSAAは本来累積できない指標です。
一方で1勝の価値は年毎に不変であり、累積することができるためRSAAを勝数に変換したものがRSWINです。

上の表を見ると、ダルビッシュは安定して好成績を叩き出しており、通算でも田中を上回っています。
一方で田中はダルビッシュのキャリアハイを上回る成績を2度記録しており、
瞬間最大風速は田中の方が上回っていると言えそうですね。
今回はここから更に一歩踏み込んでいきます。

環境 - コピー

田中将大がどういった環境で投げてきたかを示すデータです。
守備得点は「平均的な野手陣と比べて、野手陣が守備により何点分の失点を防いだか」を示します。
得点PFは「リーグの平均的な球場と比べて、球場がどれだけ点が入りやすいか」を示します。
楽天は創設初年度、守備打撃共に断トツリーグ最下位の成績に沈みました。
創設2年目に監督に就任した野村克也は、山崎武司らベテランと外国人による攻撃面の改善を優先していたようで
守備面の改善にはやや時間がかかったようです。当時の楽天は投手にとってかなり過酷な環境だった事が伺えます。

環境

ダルビッシュ有がどういった環境で投げてきたかを示すデータです。
2007年の日本ハムはDERによる算定で歴代1位,翌2008年には歴代3位の守備得点を記録。
田中が所属していた楽天とは対照的に、ダルビッシュがプレーした7年間において日本ハムはNPB史上屈指の守備陣を形成しました。
二人の後ろを守る野手の守備力の差は、先に示した9回あたりの被安打率に現れていると考えられます。
また、日本ハムの本拠地である札幌ドームが点が入りにくい球場であることも、ダルビッシュの防御率を後押ししたと考えられます。
以上の二点を踏まえて、RSAAとRSWINに補正をかけます。

結果

結果 - コピー

守備力補正は「リーグの平均的な守備力を持った野手陣を後ろに投げる場合と比べて、何点分失点が増えているか」を示します。
球場補正は「リーグの平均的な本拠地で投げる場合と比べて、何点分失点が増えているか」を示します。
球場補正をかける際には、該当年,前年,前々年の得点PFの平均を取って跳ね返り係数を算出しました。
(日本ハムの札幌ドーム移転が2004年であるため、ダルビッシュの2005年は2004年-2006年の平均値としました。)
チーム守備力と本拠地を考慮した場合、通算成績でも田中がダルビッシュを上回る結果となりました。
次はFIPを詳しく見ていきます。

FIP田中

FIP田中 - コピー

FIPは初めから評価から守備力が外されている指標なので、守備力補正は必要ありません。
FIP+は「リーグの平均的な投手と比べて、FIPにより何点分チームの失点を減らしたと評価されるか」を示します。
(リーグ平均防御率-FIP)÷9*投球回×(リーグ総失点÷リーグ総自責点)
補正FIPWINは、球場補正をかけたFIP+を勝数に変換したもので、RSWINと同じ次元を持ちます。
こちらでも、通算成績で田中がダルビッシュを上回る結果となりました。

今回は失点率ベースの評価とFIPベースの評価と二通り行ってみました。
どちらの場合も通算成績についてはダルビッシュより田中の方が優秀という結果でしたが、
FIPのキャリアハイはダルビッシュが田中を大きく上回っており、日本最終年の能力は甲乙つけがたいと言えます。

今季から田中将大もダルビッシュ有の後を追って活躍の場をMLBへ移しました。
NPB史上に燦然と輝く2人の大投手がこれからMLBでどのような成績を残していくのか、楽しみで仕方ありません。
kesshutudo.png


□おまけ
補正RSWIN及び補正FIPWINを用いてWARを試験的に算出してみます。
ここでBaseball-Reference様を参考に控え投手を「勝率.380の投手」と定義すると、
以下のような結果が得られます。
war.png

WAA(補正RSWINor補正FIPWIN)+投球回*0.12/9」で算出されるWARです。
「控え投手と比べて、投球でどれだけチームの勝利数を増やしたか」を示します。
左はBaseball-Reference様のWAR(rWAR)、右はFangraphs様のWAR(fWAR)に近いかもしれません。

・控え選手の定義(DELTA様の算定ではNPBでは控え投手と平均投手の差はこれより大きいようです)
・先発とリリーフの区別ができていない
といった問題点がありますが、現在はひとまずこの方式のWARの通史的な算出を考えています。

wark.png

現時点で得点PFが算出出来ている2004年以降について、失点率ベースのWARをまとめました。期勝は「期待勝利数」の略で、
「後ろを守る野手陣が平均的な守備力を持ち、援護する打線が平均的な攻撃力を持っている場合、何勝あげられるか」を示します。
環境は「本拠地球場と野手陣の守備力の影響で何点分失点が増えているか」を示します。

表において目を引くのは三浦大輔の位置です。
三浦は球場と守備により平均的な投手と比べて73点も失点が多くなっており
この分を補正すると、過去10年間のWARは田中,ダルビッシュ,杉内に次ぐ4位となります。
ひょっとしたら、21世紀以降にNPBで最もチームに貢献した投手は三浦大輔かもしれません。
他に館山昌平,石川雅規,黒田博樹の3人も本拠地球場の影響を大きく受けており、彼らの成績を評価する際にはこれを考慮する必要があると思います。

このデータもまとまり次第、順次公開していきたいと考えています。

□追記
平成の大投手 三浦大輔」 三浦大輔について同様の評価法で調べました。よろしければご覧ください。

コメント

No title

こちらは2014年の記事ですが、前田健太は最終的に傑出度はどこまで上がったのでしょうか。
それにしても歴代傑出度上位3人がメジャーに行くとはすごい時代ですね。

Re: No title

ゆさん、コメントありがとうございます!

上の記事では考慮されていないPF補正まで入れて計算すると、
2014年に数字を下げたこともあって、前田健太は1000投球回以上ではギリギリ4位に落ちてしまっていますね。
ただ3位の藤本は傑出しやすいエクスパンション時代に多くのイニングを投げているので、実質的には前田が3位と言ってもいいかなと。

将来的には大谷翔平も上位に食い込んでくるかと思います。
本当に素晴らしい投手が次から次に出てくるすごい時代になりましたね。

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