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糸井嘉男の成績低下リスクを考える


オリックス・糸井、国内FA権行使し阪神に移籍(読売新聞)
オリックスから国内フリーエージェント(FA)権を行使していた糸井嘉男外野手(35)が阪神に移籍することが21日、
分かった。オリックスの長村裕之球団本部長がこの日午前、大阪市内で糸井と会い「阪神でプレーさせていただきます。
4年間、本当にお世話になりました。感謝しています」と伝えられたと報道陣に明かした。


糸井嘉男という打者

FA権行使による、糸井嘉男の阪神タイガース移籍が確定しました。
改めて糸井嘉男の打撃成績を眺めてみます。

年度別打撃成績_20161126
※2016年の糸井嘉男は平均と比べて1.48倍の得点生産力を有し(wRC+)、1.10倍のBABIPを記録し(BABIP+)、0.76倍多く三振を喫し(K%-)、
 1.42倍多く四球を選び(BB%+)、1.24倍のISOを記録した(ISO+)ことを示す。ISOは「長打率-打率」で算出される長打力の高さを示す。


通算wRC+151は通算4000打席以上では現役No.1の数値。現役最高打者の一人と見てよいでしょう。
wRC+を元に計算すると糸井は年間で30点近い利得をチームにもたらす計算になりますが、
これは平均的な打者を糸井に入れ替えるとチームの貯金が6増えるくらいのインパクトの大きさです。

要素別に見ると、BABIP・三振率・四球率など出塁系スタッツに強みを持っているのが特徴です。
甲子園は本塁打の出にくい球場であり、長打力を武器にしている打者の獲得は成績低下のリスクを伴うことを考えると、
出塁に強みを持つ、すなわち得点生産を長打に依存していないことは好都合と言えます。
過去には札幌ドームと大阪ドームでプレーしていますが、こうした投手有利の環境で結果を残していることも好材料です。

以上のように総合的な打撃能力が優秀ということ、打撃スタイルが甲子園にフィットしていることを考えると、
少なくとも短期的に見れば、阪神は得点力を底上げできる見込みが強いと考えられます。

ネックはやはり年齢。35歳であることを考えると4年は異例の長期契約です。
30代後半になると打撃不振に陥ってレギュラーを外され、そのまま引退という打者も少なくありません。
この「加齢による成績低下のリスク」をどう捉えるかによって、糸井獲得の評価は分かれるのではないでしょうか。

35歳以降の成長曲線

そもそも、30代後半になると成績はどのくらい下がるのでしょうか。
21世紀において、35歳シーズンで400打席をクリアした日本人打者は以下の35人。
彼らの成績はどうなったのか、まずは36歳から39歳にかけて打席数がどう推移したかを見ていきます。

35歳kai_20161123
※左側は35歳時点でのシーズン成績、右側は36歳から39歳にかけての打席数推移を示す。400打席以上は赤色で色付けしました。

36歳から39歳まで400打席を一度も割り込まなかったのは、まだ39歳を迎えていない5人を除外すると、
稲葉篤紀・井口資仁・和田一浩・矢野輝弘・金本知憲の5人に絞られます。割合にして約1/6。
35歳時点でレギュラーだった打者の多くは、4年以内に引退か控えに追い込まれているという結果です。

糸井の場合、4年18億という高額契約である点を留意しなければなりません。
年換算で4.5億に相当し、元を取るにはレギュラーを4年間維持することは最低限の条件となりますが、
試合に出場し続けるだけでもこれだけ難しいことから、ハイリスクな契約内容であることは否めないのではないでしょうか。

その上でチームに貢献するためには成績も残さねばなりませんが、ここでも年齢がハードルとなってきます。
セイバーメトリクス・リポート1の成長曲線の研究結果を元に試算すると、
30代後半に入ると「wRC+は年間6%程度ずつ減っていく」のが一般的な傾向であるようです。

現在こそ糸井はNPBを代表する強打者ですが、一般的な成長曲線を辿ると仮定すると、
数年後には「各チームに一人くらいはいるよね」という水準まで成績を下げることになります。
年齢を考えれば優秀ではあるのですが、4.5億/年に見合った成績かと言われれば疑問符を付けざるを得ません。

こうした一般的な成長曲線に対して、糸井が抗える可能性はどれだけあるのでしょうか。
ここでは39歳までレギュラーを維持した5人のwRC+推移を見ていきます。

wrc複合_20161125

稲葉篤紀の推移は綺麗な右肩下がりで、一般的な成長曲線に近いものとなっています。
一般的な打者はこれだけ成績を下げるのが普通である中、和田一浩・金本知憲・井口資仁の3人は成績を落としていません。

3人の共通点として「三振が少なく四球が多い」、ストライクゾーン管理に優れた打者であることが挙げられます。
この能力はピークを迎える年齢が遅く、加齢による衰えも緩やかであることが知られており、
それを持ち味とする打者は長く活躍しやすいのではないかと考えられます。

前述の通り、こうした三振率・四球率は糸井の得意分野に他なりません。
糸井が成績をどれだけ維持できるかを考える時に、この点は好材料となるのではないでしょうか。

表中だと森野将彦・松中信彦・阿部慎之助の3人は、ストライクゾーン管理に優れながらも成績を落としていますが、
彼らの場合は死球や持病によるコンディション不良から以前のような打撃が出来なくなったという側面が強く、
そうした強烈なアクシデントに見舞われない限り、一般的な成長曲線よりも緩やかな成績低下を辿る見込みは強いと考えます。

指名打者が使えないことによる懸念

その強烈なアクシデントに繋がりかねない懸念について。
糸井嘉男のポジション別先発出場試合数の年度別推移を以下に示しました。

年度別先発_20161126

2015年以降、指名打者での出場が増えていることが分かります。
糸井は左膝の痛みのほか、昨季は右肘と右足首を故障するなどコンディション面に不安を抱えています。
オリックスは指名打者で起用することで、故障がちな糸井の負担を減らすよう対応してきました。

指名打者の使えないセリーグでは、負担を減らす方法を新しく考えなくてはなりません。
定期的に先発から外す休養日を設けるのが基本線になると考えられますが、
どういった方法でも出場機会減は避けられず、オリックス時代に比べて貢献の目減りが予想されます。

加えて、現在の阪神の編成状況も不安材料の一つです。
左翼手には髙山俊、右翼手には福留孝介がレギュラーとして定着していることから、
金本監督は中堅手での起用を示唆しており、守備負担の増大がコンディションに悪影響を及ぼす可能性があります。

最終的な起用方針の決定権は金本監督が握っています。
今季の阪神はコンディションよりも勤続出場を重視する起用方針が取られた結果、
体調不良を押して出場を続けていた鳥谷敬が、精彩を欠いたプレーをする場面が何度も見られました。

この失敗を経験した金本監督がどのように糸井の運用を行うのか、注意深く見ていきたいところです。

コメント

No title

いつも楽しく拝見させていただいております。

井口選手は成績を落としていないとありますが、
39歳に井口選手が一塁手に転向しているのは見逃せない点ですね。守備負担の低下はwRC+の向上につながり、逆に糸井をセンターに転向させ守備負担を増加させればwRC+が低下するでしょう。
現状左翼手のレギュラーには物足りない打撃成績である高山選手を中堅手として起用(競争?)させ、糸井選手を左翼手として起用するほうがベターでしょうね。

それにしても、2003年の金本選手のISOが平均以下だったとは驚きです。
HRPFが1.2~1.5となっていた広島市民球場から、時には0.5を下回るほどのHRPFだった甲子園にうつったことがその一因だと思われます。
糸井選手の場合も、HRPFでプラスを記録したこともある京セラから、統一球導入以後一度も0.8を超えるHRPFを記録したことない甲子園にうつること、さらにリーグの環境の違いなどもあれば一時的なISOの低下は免れないかもしれません。
もっとも、その後の金本選手の活躍やリーグの違いをものともしなかった和田選手の活躍をみれば、糸井選手も見事に適応してくれると期待できますね。

凄く興味深く拝読しました。
選手生命が長い選手と短い選手の記述が面白いです。

糸井選手の場合気になるのは守備位置と前後を打つ選手です。守備の劣化が目立ってきている糸井選手を本当にセンターで使うのか。高い出塁率の糸井選手を返すポイントゲッターを誰にするのか。二番構想らしいですが、一番に出塁率低い選手置いたら意味ないですし。

非常に興味深いです。

記事作成お疲れさまです

ゆ さんがコメントされた通り、高山選手を中堅で使う起用方も考えられますが、今年の高山選手は守備指標でマイナスを記録しているところが少し問題ですね
左翼守備の記事を拝見したところ、外野守備がキャリアを積むごとに成長するという事例はあまりないので、レフトからセンターへのコンバートは現実的では無さそうです

高山選手を福留選手と糸井選手の控えとして起用し、両選手が年齢による衰えでスタメンから外れた頃に、打撃力が向上した高山選手を次世代の主力打者として繋げていくことが、阪神が現在取り得るもっとも良い起用方なのではないかと私は思います(長文&妄想コメントですいません)

Re: No title

ゆさん、コメントありがとうございます!

仰る通り、井口は一塁手に転向したのが成績を維持できた要因の一つかもしれませんね。

守備負担の増大がコンディションに悪影響を及ぼすような場合にのみ、成績低下が起こるのではないかと個人的には考えています。
これまでのデータを見ていると、守備負担の小さいポジションに移っても成績が回復しない打者も多いので、(逆も然り)
守備負担と成績は必ずしも直接的なトレードオフ関係には無いように感じるんですよね。

例えばもともと万全なコンディションで二遊間を守れている選手は、
一塁手にコンバートされても成績はほとんど変わらないでしょうし、逆に一塁手から二遊間にコンバートされても、
コンディションに影響が及ばないような運用ができるのであれば成績はあまり落とさないのではないかなと。

髙山が破綻の無いレベルで中堅を守れるのであれば、
仰るように左翼糸井・中堅髙山・右翼福留という布陣が一番収まりが良いと私も考えますが、
開聞岳さんが仰るように髙山は左翼手の中でもワーストクラスの守備指標を残しているのがネックですね。
なかなかリスキーかなと思いますが、実際に起用してみないと何とも言えない部分もあるので試す価値はあると思います。

Re: タイトルなし

たくさん、コメントありがとうございます!

糸井の二番構想については初めて耳にしたのですが、とても面白い試みですね。
ゴメスが抜けて長距離打者がほぼいなくなったので、後ろの組み方が悩ましいところですが、
長打力に関しては髙山俊・原口文仁の成長に期待したいです。一番は北條が濃厚みたいですが鳥谷もいいかなと。

Re: タイトルなし

開聞岳さん、コメントありがとうございます!

守備のピークは打撃(27歳頃)よりも前と言われているので、
仰るように髙山のような大卒野手がキャリアの中で守備を伸ばしていくのは難しいでしょうね。
「今季の守備指標は本当に髙山の能力を表しているのか」というサンプルサイズの問題も絡んでくるのがややこしいところですが。

関西メディアの間では、髙山は既に生え抜きのスターのような扱いを受けていますし、
現状から控えに外すのはかなりハードルが高いように感じますね。

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