野手成績の見方
凡例:1994年イチロー(オリックス)各項目は以下のように分類できます。
・打者としての総合的なバリューを評価する指標(wRAA/wRC+)
・打者としての特性を評価する指標(BABIP+/K%-/BB%+/ISO+)
・盗塁によるバリューを評価する指標(wSB)
・守備によるバリューを評価する指標(守備位置補正/守備)
・選手としての総合的なバリューを評価する指標(WAR)
打者としての総合的なバリューを評価する指標(wRAA/wRC+)1994年イチローはwRAA48.9、wRC+168を記録。
平均的な打者が同じ打席数を消化した場合と比べて打撃で
48.9点だけ所属チームの得点を増やしたこと、
平均的な打者と比べて打席あたりで
1.68倍の得点を生産したことをそれぞれ示します。
「得点増加への寄与」を「打者としての総合的なバリュー」と見なしているわけですが、
これは試合に勝つために打者ができることは、突き詰めると「チームの得点を少しでも増やすこと」しかないためです。
得点生産を物差しとすることで、打率が高い・本塁打が多いなどの項目をひっくるめた総合的な評価が行えます。
計算式
wRAA = ( 対象のwOBA - リーグ平均wOBA × wOBA-PF補正係数 ) ÷ 1.24 × ( 打数 + 四球 - 敬遠 + 死球 + 犠飛 )
wRC+ = wRAA ÷ ( 打数 + 四球 - 敬遠 + 死球 + 犠飛 ) ÷ ( リーグ総得点 ÷ リーグ総打席 ) × 100
wOBA-PF補正係数 = Σ( 対象の各球場での打席 × 各球場の3年移動平均wOBA-PF ) ÷ 打席
※wOBAの係数は1.02 - Essence of Baseballから引用した
※wOBA計算時に対象外となる打席を母数に含めるのは不適切と判断し、wRAAとwRC+の計算は打席ではなくwOBAの分母で行った
※地方球場のパークファクターは計算が不可能であるため一律で1とした
※1956年以前はフランチャイズ制確立前でPFが計算できないため、wOBA-PF補正係数を一律で1とした
※2004年以前は失策出塁のデータが手に入らなかったため、失策出塁を含めずに計算した
打者としての特性を評価する指標(BABIP+/K%-/BB%+/ISO+)1994年イチローはBABIP+132、K%-51、BB%+91、ISO+120を記録。
平均的な打者と比較して
1.32倍のBABIP、
0.51倍のK%、
0.91倍のBB%、
1.20倍のISOを記録したことを意味します。
BABIPはグラウンドへの打球が安打になった割合、K%は三振率、BB%は四球率、ISOは長打力を示します。
なぜこの4項目に着目するかというと、この項目で得点生産(wRC+)をもれ/だぶりなく解像できるためです。
得点がOPS(出塁率+長打率)で説明できることから分かるように、得点生産は出塁力(出塁率)と長打力(ISO)で説明できます。
更に出塁率はBB%(四球率)と打率に分解でき、打率は三振率(K%)とBABIPに分解できます。
計算式 BABIP+の場合
BABIP+ = 対象のBABIP ÷ ( リーグ平均BABIP × BABIP-PF補正係数 ) × 100
BABIP-PF補正係数 = Σ( 対象の各球場での打席 × 各球場の3年移動平均BABIP-PF ) ÷ 打席
※K%-/BB%+/ISO+も同様に計算
※地方球場のパークファクターは計算が不可能であるため一律で1とした
※1956年以前はフランチャイズ制確立前でPFが計算できないため、PF補正係数を一律で1とした
盗塁によるバリューを評価する指標(wSB)1994年イチローはwSB3.2を記録。
平均的な走者が同機会を得た場合と比べて盗塁で
3.2点だけ所属チームの得点を増やしたことを示します。
盗塁以外の走塁によるバリューは通史的な計算が困難であるため取り扱いません。
計算式
wSB = 対象の盗塁による得点増 - 対象の盗塁機会 × ( リーグ全体の盗塁による得点増 ÷ リーグ全体の盗塁機会 )
盗塁による得点増 = 盗塁 × 盗塁の得点期待値 + 盗塁死 × 盗塁死の得点期待値
盗塁機会 = 単打 + 四球 - 敬遠 + 死球
※盗塁と盗塁死の得点期待値はwRAA For Position Player WAR Explained - Baseball Referenceを元に計算した
※1941年以前は盗塁死が記録されていないため計算対象外とした
守備によるバリューを評価する指標(守備位置補正/守備)1994年イチローは中右で守備位置補正-1.0を記録。
中堅手と右翼手として守備に就き、守備位置補正-1.0点を記録したことを示す。
守備によるバリューをポジション間で比較するための補正となります。
守備位置補正は、近年分については同一選手が複数ポジションを守った際の守備成績変化から算出するのが一般的ですが、
通史的にそれを行うのは困難であるため、各ポジションの打者が記録したwRAAから守備位置補正係数を計算しています。
ポジションはその年に守備に就いたポジションを、イニングベースでイニングの多い順に記載しています。
出場イニングが最多ポジションの半分以下のポジションは「/」で区別しました。
出場イニングが最多ポジションの10%以下のポジションは割愛しました。
※現状守備成績は未掲載。将来的に算出して掲載する予定です。
計算式
守備位置補正 = Σ( 対象の各ポジションの守備イニング × 各ポジションのポジション係数 ) ÷ 対象の総守備イニング
ポジション係数 = 過去20年間に全打者がそのポジションで記録したwRAA ÷ 過去20年間の総イニング
※打者が各ポジションで記録したwRAAはwRAA×そのポジションでの守備イニング÷総守備イニングで近似した
※守備イニングは試合単位データから先発時は試合イニング-2Inn*そのポジションでの途中出場人数、途中出場時は各2Innを集計したものを使用した
選手としての総合的なバリューを評価する指標(WAR)1994年イチローはWAR7.1を記録。
平均的な控え選手が同じだけ出場する場合と比べてチームの勝利数を
7.1勝分増やしたことを示します。
打撃、守備、走塁を総合的に加味して計算した貢献がこちらになります。
※現状守備成績を計算に含めていないため、oWARに相当する数値となります。
計算式
WAR = ( 対象のwRAA + 対象のwSB + 対象の守備位置補正 + 対象の守備 ) ÷ RPW + 対象の代替補正
RPW = ( ( リーグ総失点 + リーグ総得点 ) ÷ リーグ総イニング )の平方根 × 10
代替補正 = 対象の打席 ÷ 300
※リプレイスメントレベルは年間で得点換算で20点程度とされているため、ここではRPWを10で固定して600打席あたり2勝とした
参考:リプレイスメント・レベル(代替水準) - 1.02 - Essence of Baseball
投手成績の見方
投手凡例 2007年ダルビッシュ有(日本ハム)

ERA+ 157リーグ平均を100としたときの防御率傑出度を示す。逆数の形で表されているため、数値が高いほど優秀です。
ダルビッシュ有の防御率はリーグ平均の
1/1.57 倍でした。算出にあたって後述の補正により球場と守備の影響の排除を試みています。
RSAA 42.81 / RSWIN 4.56リーグの平均的な投手が同じ投球回を消化した場合と比べて、投球で
42.81点だけチームの総失点を増らしたことを示す。
ダルビッシュ有を平均的な投手に置き換えた場合、年間489失点だった日本ハムの失点は532得点程度まで増えると予想されます。
リーグの平均的な投手が同じ投球回を消化した場合と比べて、投球で
4.56勝だけチームの勝利数を増やしたことを示す。
ダルビッシュ有はチームの総失点を
42.81点だけ減らしたため、結果としてチームの勝利数が年間で
4.56勝増えると予想されます。
ダルビッシュ有を平均的な投手に置き換えた場合、年間79勝だった日本ハムの勝利数は74勝程度まで減ると予想されます。
球場補正 -2平均的な球場でプレーする場合と比べて、札幌ドームの影響でダルビッシュ有のRSAAが
2点分高くなっていることを示す。
「+」は所属球団の本拠地が得点の入りやすい球場であるため正の補正がかかっている、
「-」は所属球団の本拠地が得点の入りにくい球場であるため負の補正がかかっていることを示す。
守備補正 -14平均的な守備陣をバックにプレーする場合と比べて、ダルビッシュ有のRSAAが
14点分高くなっていることを示す。
「+」は後ろの守備力が平均より低いため正の補正がかかっている、
「-」は後ろの守備力が平均より高いため負の補正がかかっていることを示しています。
補正RSAA 27.58 / 補正RSWIN 2.94同じ環境でリーグの平均的な投手が同じ投球回を消化した場合と比べて、投球で
27.58点だけチームの総失点を増らしたことを示す。
同じ環境でリーグの平均的な投手が同じ投球回を消化した場合と比べて、投球で
2.94勝だけチームの勝利数を増やしたことを示す。
補正前のRSAA/RSWINと比較して数値が低くなっていますが、ダルビッシュ有が恵まれた環境で投げていたことを意味しています。
WAR 5.7
同じ環境でリーグの平均的な投手が同じ投球回を消化した場合と比べて、投球で
5.7勝だけチームの勝利数を増やしたことを示す。
RFIP 2.36平均防御率3.80を基準とした場合、守備から独立した疑似防御率を示すFIPは2.36と評価されることを示す。
リーグ平均を元に打低打高環境に応じた補正を加えているため、異なる年度やリーグ間での比較に適しています。
AS B9 GG MVP 沢村賞ASはオールスター選出、
B9はベストナイン選出、
GGはゴールデングラブ賞選出、
MVPはMVP選出、
沢村賞は沢村賞選出を示す。