はじめに
2015年私的シルバースラッガー賞(セリーグ編) 交流戦までと同様のアプローチで、RCWINを用いて「打撃貢献度の最も高かった選手」をポジション別に選出したいと思います。
具体的な算出方法
選出基準は「
同ポジションの控え選手と比較して、打撃でどれだけ所属チームの勝利数を増やしたと評価できるか」とします。
比較対象が控え選手となっているのは、
年間通して平均程度の活躍をした選手が評価されないという事態を避けるためです。

2015年パリーグ打撃成績を先発守備位置割合に応じて分配し、守備位置別に集計して500打席あたりに直したものが上の表です。
この表の数字との比較を基軸として、比較対象を控え選手に切り替えるための補正と球場補正をかけて貢献度を決定していきます。
球場補正は2014年,2013年,2012年のデータに対し「4:2:1」で加重平均をかけた得点PFから跳ね返り係数を求め、
リーグ平均=1となるように等倍補正をかけたものを使用しました。具体的には以下のような数値となります。
ヤフオクドームについては、テラスの導入により前年までの得点PFが使えないため2015年の速報値を使用しました。
-0.25勝/500打席 ソフトバンク(ヤフオクドーム)
-0.18勝/500打席 西武(西武ドーム)
+0.05勝/500打席 ロッテ(QVCマリン)
+0.16勝/500打席 日本ハム(札幌ドーム)
+0.17勝/500打席 オリックス(京セラドーム大阪)
+0.05勝/500打席 楽天(koboスタジアム)
平均的な選手と控え選手の打力差は「600打席で2勝分」としました。
表の見方

ソフトバンクの
中村晃を例に挙げると、
「一塁手」として出場した打席で「平均的な控え一塁手」と比べて、打撃で「+0.4勝分」チームの勝利数を増やした
「左翼手」として出場した打席で「平均的な控え左翼手」と比べて、打撃で「+0.2勝分」チームの勝利数を増やした
「右翼手」として出場した打席で「平均的な控え右翼手」と比べて、打撃で「+0.9勝分」チームの勝利数を増やした
「一塁手」として出場した打席で「平均的な 一塁手」と比べて、打撃で「+0.1勝分」チームの勝利数を増やした
「左翼手」として出場した打席で「平均的な 左翼手」と比べて、打撃で「+0.1勝分」チームの勝利数を増やした
「右翼手」として出場した打席で「平均的な 右翼手」と比べて、打撃で「+0.3勝分」チームの勝利数を増やした
ということを示しています。
ポジションの平均程度の成績で規定打席(446打席)を消化した場合、控え比較(左側)の数値はおよそ「+1.5勝分」となります。
言い換えれば「平均的なレギュラー野手の1年分の打撃貢献」がおよそ「+1.5勝」であるということを意味します。
中村晃は一塁左翼右翼の合計が+1.5勝であり、すでにレギュラー野手1年分の打撃貢献を生み出した、と見ることができます。
このような表記形式で、ポジション別の評価に入っていきたいと思います。
捕手

近年は
嶋基宏と
伊藤光の2強状態だったパ捕手の打撃事情ですが、
三塁から本職の捕手に戻ってきた
近藤健介がパ捕手1位となりました。
四球と二三塁打により大きな利得を稼いでおり、打撃3部門を見ただけでは過小評価されるタイプの打者であると言えます。
一塁手

40本台後半ペースでHRを量産する
中田翔がパ一塁手1位となります。
ここまではややBABIPの低迷に泣かされている嫌いがあるため、
後半戦は前半戦以上のペースで打撃利得を積み上げるのではないかと予想しています。
李大浩は出場が指名打者に分散しているため量は惜しくも2位となりましたが、質では中田を上回っています。
二塁手

高い奪四死球率を見せる
浅村栄斗がパ二塁手1位となります。
ルイス・クルーズ、
藤田一也も依然として好調を維持していることや、新鋭の
西野真弘の台頭もあり、
今季のパリーグ二塁手打力は大幅な改善傾向が見られ、ポジション平均OPSは左翼手を上回っています。
本多雄一の不調と離脱により、ソフトバンクは二塁手の確保に苦しんでいる様子が窺えます。
三塁手

交流戦で本塁打を量産した
中村剛也がパ三塁手1位となります。
中村剛也と
松田宣浩がトップ争いをし、
銀次と
今江敏晃がそれを追いかけるという近年よく見る構図になりつつあります。
遊撃手

二塁からコンバートされた
中島卓也がパ遊撃手1位となります。僅差で
安達了一、
鈴木大地が追随しています。
今季のパリーグ遊撃平均OPSは捕手とそこまで変わらない値が出ており、かなりの低迷傾向にあると言えます。
各球団の遊撃打力の偏差も小さくなっており、守備力の差がそのまま貢献量の差になっている印象を受けます。
左翼手

日本記録を上回るペースで三塁打を量産している
西川遥輝がパ左翼手1位となります。
近年パ左翼上位を占めることが多かった
栗山巧、
内川聖一が例年通りの調子とは言えない状況であり、
顔ぶれが変わりつつある印象を受けます。左翼全体で見ると打力はやや低迷傾向。
中堅手

驚異とも言える出塁率.470を記録している
柳田悠岐がパ中堅手1位となります。
チーム63試合目でRCWIN3.31を記録しており、日本人野手としては2002年松井秀喜以来の数値を記録する可能性を残しています。
2位の
秋山翔吾もシーズン記録を塗り替えるペースで安打を積み上げる素晴らしい活躍を見せています。
右翼手

今季遂にブレイクした
清田育宏がパ右翼手1位となります。
近年上位を占めることが多かった
糸井嘉男、
長谷川勇也が例年通りの調子とは言えず、左翼に似た状況と言えます。
森友哉が本格的に右翼にコンバートされた場合、更に状況が変わってきそうです。
指名打者

まだ10代の
森友哉がパ指名打者1位となります。
打者のタイプとしてはBABIPの異常な高さを除けば、現時点では
池山隆寛と近い印象を受けますが、
今後、どのような成長曲線を描いていくのかとても楽しみです。
総評

当ブログの選出する、交流戦終了時点の各ポジション最優秀打撃選手は以上のようになります。
外国人選手無し、30代選手も中村剛也のみとこちらも世代交代が一気に進んだ印象がありますね。

出場した全ポジションでの打撃貢献合計値40傑です。パリーグ前半戦における打のMVPは
柳田悠岐となります。
シーズン終了時点でどのような成績を残すのか、とても興味深いです。
おまけ:昨年はこんな感じでした
2014年私的シルバースラッガー賞[パリーグ編]