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秋山翔吾と柳田悠岐が挑む、もうひとつの日本記録

西武・秋山 今季20度目の猛打賞で31連続試合安打達成(東スポWeb)
 西武・秋山翔吾外野手(27)が12日の日本ハム戦(札幌ドーム)で今季20度目の猛打賞を記録し、打率を3割8分7厘に上げ、連続試合安打をプロ野球記録の33試合(1979年、高橋慶彦=広島)に「あと2試合」と迫る31試合に伸ばした。

 秋山翔吾が止まりません。2試合連続の猛打賞により安打は139まで積み上がり、打率は.387に上昇しました。
 4月3日時点の「.385」を超え、今季4月以降では秋山にとって最も高い打率となりました。(参考:ヌルデータ置き場さん)

 プロ野球記録の「214安打」までは、残り59試合で75安打を記録すれば到達できる計算です。
 ここまで84試合で139安打を記録していることを考えれば、記録更新が現実味を帯びてきましたが、
 その裏で「もうひとつの大記録」に、あと一歩のところまで手がかかっているのはあまり知られていません。
 更新されれば「プロ野球史上最強打者」王貞治以来、実に41年ぶりの記録となります。


安打数より重要な記録?

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 これ、何の数字か分かるでしょうか?「マネーボール」においては安打数よりも重要な数字とされていました。
 1967年から1984年まで、セリーグでは正式なタイトルとして表彰されていた記録でもあります。

 ・・・

 表の数値を注意深く見ると、安打数と四死球数を足した値であることが分かると思います。正解は「出塁数」です。
 昨今のセイバーメトリクスの普及により、過去と比べて出塁率がかなり重視されるようになりましたが、
 出塁率の分子に当たる出塁数は、現在に至るまであまりスポットを浴びておらず、少し寂しい気もします。それはさておき。

 歴代出塁数上位を見ると中軸打者が大半を占めており、「リードオフマン」と呼ばれる選手はむしろ少数派であるようです。
 「出塁数が最も多いのは1番打者」というイメージが一般的だと思われるため、これは少々意外な結果かもしれませんね。
 後続打者の充実具合や走塁能力を考えると、中軸相手の方が「守る側が四球という選択を取りやすい」のが主な理由かもしれません。
 以上の理由から、1番打者にとってはむしろ更新が難しい記録だと言えるのではないでしょうか。

 そんな中、ここまでの全試合を「一番中堅」で先発出場している秋山は、驚異的なペースで出塁数を積み重ねています。
 現在チーム84試合目で出塁数は両リーグ1位の172を記録。実に1試合平均で2回以上出塁している計算となります。
 シーズン終了時点で293まで伸びるペースであり、1974年王貞治が記録したプロ野球記録(294出塁)にあと一歩まで迫ります。
 また、1番打者としては2010年西岡剛(289出塁)を上回る歴代最高記録となります。
 秋山の1番打者としての出塁能力は歴代屈指だと言えそうです。


秋山翔吾と歴代1番打者の出塁能力比較

 1obp.png

 2015年7月12日現在の1番打者シーズン出塁率10傑です。
 2015年の秋山は396打席で表中の規定に対して4打席不足していますが、歴代3位に相当する.439を記録しています。
 現在の水準を今後どれだけ伸ばしていけるか、または維持できるか、注目して見ていきたいところです。

 高卒3年目ながら210安打を放ち、鮮烈なデビューを果たした1994年イチローが歴代1位の出塁率を記録しました。
 しかしながら、この記録はシーズン400打席以上の全打者の中では歴代44位に過ぎません。
 つまり打順縛りが無い場合、これより高い出塁率を記録した打者が43人も存在するわけで、
 「1番打者が出塁を多く記録することは難しい」という状況的な証左と言えるのではないでしょうか。
 実際に、イチローも4番打者時代の2000年に出塁率のキャリアハイ(.460)を記録しています。

 1obp2.png

 こちらは2015年7月12日現在の1番打者シーズン出塁率傑出度10傑です。
 リーグ野手平均を100としたときの出塁率傑出を示し、「環境を考慮した出塁率の高さ」を意味します。
 秋山は歴代5位に相当する133.6を記録しています。歴代の1番打者と比較しても屈指の出塁率と言えそうです。

 こちらの歴代1位は1956年与那嶺要。第2次讀賣黄金時代のリードオフマンを務めた打者です。
 この年はリーグ野手平均の実に1.5倍近い出塁率を記録したほか、1954年にも歴代3位に相当するスコアをマークしました。
 「史上最高の出塁能力を持ったリードオフマン」は彼で間違いないでしょう。

 
タイプの違う二人の打者

 ここまで秋山の出塁能力の高さについて触れてきましたが、
 今季のパリーグには、王貞治のシーズン出塁数記録に手をかけている打者がもう一人存在します。
 それが現在のパリーグ最高出塁率打者、柳田悠岐です。

 柳田と秋山は共に出塁率が高いという共通点は持っていますが、その出塁の中身は大きく異なっています。
 そこで、打席中の各要素の割合について可視化を行なってみました。参考にパ平均打者も添えました。

 type.png
 青の部分が安打、緑の部分が四死球、灰の部分がアウトを示します。
 守備アウトは、打者の全アウトから三振を除いたものです。野手守備の絡んだアウトを示します。

 打席数に占める安打の割合は、秋山(35.1%)が柳田(31.5%)を上回っていますが、
 打席数に占める出塁の割合(安打+四死球)は、四死球の差により柳田(46.9%)が秋山(43.4%)を上回っています。

 共にバットに当たれば高確率で安打を記録できるという共通点を持っています。(柳田:46.3%,秋山:44.4%,平均:32.5%) 
 柳田は四死球/三振比が優秀で、バットに当たらなくても当てた場合より高確率(48.6%)で出塁が見込めますが、
 秋山は四死球/三振比がそこまで優秀ではないため、バットに当たらなかった場合、出塁確率は大きく下がります。(41.7%)
 積極的にバットを振り、バットに当たらない打席(三振と四死球)を減らしていく秋山の戦略は正解と言えるでしょう。
 結果的に四死球/三振比の差が、全体の出塁率の差に結び付いているようです。
 

柳田悠岐と歴代打者の出塁能力比較

 柳田悠岐はここまで秋山に次ぐリーグ2位の165出塁(111安打/54四死球)を記録しています。
 秋山を下回っているのはチーム消化試合数の都合で、1試合当たりの平均出塁数は柳田が上回っており、
 シーズン終了時点で299出塁を記録するペースで、プロ野球史上初のシーズン300出塁も視野に入っています。
 柳田もまた、歴代屈指の出塁能力を持っていると言えそうです。

 obp.png 

 2015年7月12日時点のシーズン出塁率20傑です。20位まで綺麗に一三塁で埋まりました。
 2015年の柳田が記録している出塁率は、1999年ペタジーニと同値の歴代16位相当となります。
 外野手は21位2001年金本知憲、22位2001年松井秀喜まで出てこないため、現時点で外野手歴代最高値となっています。
 
 歴代1位は2年連続の三冠王を獲得した1974年王貞治の記録した、出塁率.532。
 1972年福本豊の106盗塁などを上回る、野手のシーズン記録ではNPB最大のアンタッチャブルレコードでしょう。
 今後これを上回る選手が出てくるとは正直思えません。

 obp4.png

 こちらは2015年7月12日現在のシーズン出塁率傑出度30傑です。
 リーグ野手平均を100としたときの出塁率傑出を示し、「環境を考慮した出塁率の高さ」を意味します。

 2015年の柳田が記録している出塁率傑出度は、2002年松井秀喜とほぼ同値の歴代23位相当となります。
 柳田より上の非外国人枠の選手を見ると、野球以外の面が原因で票が集まらなかったとされる榎本喜八、
 引退直後で資格を持たない松井秀喜を除いて全員が野球殿堂入りしている凄まじい面子となっています。

 そしてこちらも歴代1位は1974年王貞治。この記録はおそらくもう破られないでしょう。

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