はじめに
マリナーズ史上最高の4人にイチローら、地元ファンの間では賛否の声(Full-Count)
14日(日本時間15日)のMLBオールスターゲームに合わせて行われた全30球団の“史上最高の4選手”を選出する企画で、
マリナーズの4人にイチロー外野手らが選ばれたことが地元ファンの間でも反響を呼んでいる。
MLBではオールスターゲームの開催に合わせて、「フランチャイズ・フォー」がファンの手によって選出されました。
「4人」という単位は野球的にはあまり馴染みが無いのでちょっと不思議な印象を受けましたが、
若干23歳のマイク・トラウトが選出されていたり、ノーラン・ライアンが3つに分裂していたりと面白い点も多々ありました。
こうした投票結果を眺めていると、当然「NPBで同じことをしたらどうなるのか」と興味が湧いてきます。
過去のNPBにおいてもNPBと読売新聞社が主催した2000年の
センチュリーベストナインや、
近年でも日本テレビが主催した
Dramatic Game 1844 プロ野球中継60年 ベストナイン国民投票といった企画がありましたが、
球団単位で選出するものは過去に無かったと記憶しているので、仮に実現するとしたらどんな結果になるのか興味深いです。
そこで今回はNPBで「フランチャイズ・フォー」と同様の企画が実施された場合、
RCAAまとめblog的にはどういった選手に投票するか、データを基に独断と偏見を交えて考えてみました。
今回は第1弾として、「
東京ヤクルトスワローズ」(前身球団含)の歴代選手TOP4を選出します。
おおまかな選出の方針
・「同ポジションの平均的な控え選手に対し、どの程度利得を作れたか」を基軸に評価。
・基本的には通算成績の優劣で決定。長くチームに貢献した選手を優先する。
・通算成績がほとんど横並びの場合、全盛期の優劣で決定。
・「球団史上」なので、MLB期間の成績については一切考慮しない。
以上を踏まえて、RCAAまとめblogが選出した「東京ヤクルトスワローズ史上最高の4人」は以下のようになりました。
東京ヤクルトスワローズ史上最高の4人
□金田正一[1950-1964]

スワローズの輩出した唯一の200勝投手。353勝は同一球団で記録した勝利数としてはNPB歴代最多。
上の表は失点率基準のRSWINですが、FIP基準のRSWINにおいても通算で歴代1位の値を記録しています。
打撃においても通算38HRを記録するなど歴代2位相当の利得を創出しました。(
投手の打撃参照)
今後NPBのWARが整備された場合、どのような評価方法を用いようが投手歴代1位の値を記録する見込みで、
通算成績の評価では、間違いなくNPB史上No.1の投手と言えるでしょうね。
ただ、金田の評価においてしばしば槍玉に挙がるのが「単年の成績はそこまでではない」と言う点。
同時代の一線級投手(稲尾和久,杉下茂,杉浦忠)と比べると、全盛期の成績はやや格落ちと言う印象を受けますが、
彼らとは異なり、弱小球団において記録した成績であることを頭に入れて成績を見る必要があると思われます。
当時のNPBはまだドラフトもなく、チーム間の格差は今よりもずっと大きなものだったようです。
「せっかく凡打に討ち取ってもエラーされては何にもならない」とは本人の談ですが、
特に守備力の格差は大きかったらしく、名前を挙げた3人がいずれも大きな恩恵を受けていたと思われるのに対し、
金田の場合、DERの推移から味方の守備の悪さにかなり足を引っ張られていた形跡が確認できます。
その点を踏まえると、1958年の成績は彼らに引けを取らない屈指の好成績と言えるでしょう。
□古田敦也[1990-2007]
※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCWINです。ヤクルトスワローズ黄金期、最大の立役者。誰が選んでも間違いなく選ばれるであろう選手でしょう。
盗塁阻止率は歴代1位の.462。盗塁阻止と捕逸を元に算出される守備得点も歴代1位であり、(
捕手守備得点参照)
捕手守備能力はNPB歴代No.1と断言しても、あまり異論は出ないだろうと思われます。
守備だけでなく打撃も一流であり、1991年には捕手として野村克也以来2人目となる首位打者を獲得。
平均的な捕手に対して通算で+321点の打撃利得を積み上げました。これは野村、阿部に次ぐ歴代3位の数値です。
□松岡弘[1968-1985]

ヤクルトに経営母体が変わった後、しばらく低迷期の続いていたスワローズを長く支えました。
1978年の初優勝時にはエースとして活躍し16勝を挙げ、沢村賞を受賞。通算191勝は球団歴代2位。
前述の低迷期に当たるキャリア前半に勝ち星を稼げなかったことが響き、通算200勝には届かなかったものの、
質、量ともに同時代の200勝投手(北別府学,堀内恒夫)に引けを取らない成績を残しました。
表を見ると、キャリア中に松岡を取り巻く環境が大きく変化している様子が見て取れますね。
広岡監督は1976年から1977年の間に使用球を飛びにくいものに変更したと考えられ、
このことは1978年の初優勝の一つの要因となったのではないでしょうか。
衰えとチームの強豪化が並行して進み、貯金を作るペースはキャリアを通じてほぼ一定になっているのも面白いところ。
広岡監督との縁と言い、西武の大投手東尾修と共通点が多い印象です。
□若松勉[1971-1989]
※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCWINです。現役時代は「小さな大打者」と呼ばれ、スワローズ史上最多となる通算2173安打を記録。
打者として特筆すべき点は三振率の低さで、首位打者を獲得した1977年には規定到達で三振を14にまで抑えました。
平均的な打者と比較した通算三振率傑出度は0.47倍で、イチロー(0.49倍)を上回る歴代4位の数値となっています。
三振率の低さに加えて適性BABIPもかなり高かったようで、通算打率.319はレロン・リーに次ぐ歴代2位。
同ポジションの平均的な選手と比較して積み上げた打撃利得は+179点で、古田に次ぐ球団歴代2位でした。
こうした打撃能力の高さに加え、手元にデータが揃っている分と「セイバーメトリクス・リポート4」を見る限りでは、
左翼手としてはかなり強力な守備力をキャリア終盤まで維持していたようです。
守備貢献の高さも併せて、総合力の高いセリーグの名外野手の一人と言えるのではないでしょうか。
次点
□池山隆寛[1968-1985]
最多三振を3度獲得する打撃の粗さから、「ブンブン丸」の愛称で親しまれました。
遊撃手らしからぬ遠くに飛ばす長打力が持ち味で、5度のシーズン30HRは遊撃手の最多記録となっています。
同ポジションの平均的な選手(遊撃→三塁)と比較して積み上げた打撃利得は+179点。
レンジ系指標を見る限りでは遊撃守備、三塁守備も相当優秀だったようです。
□青木宣親[2004-2011]
規定到達7回で首位打者3回のアベレージヒッター。
平均的な打者に対し27%多く四死球を選ぶ選球眼も持ち合わせており、高い出塁能力を持っていました。
出塁率傑出度は1.22倍で、4000打席以上の打者としては松井秀喜とほぼ同値の歴代13位となっています。
平均的な中堅手と比較して比較して積み上げた打撃利得は+177点で、古田を上回りうるペースでした。
守備に関しては評価が分かれている印象がありますが、レンジ系指標では優秀な成績を残しています。
□ロベルト・ペタジーニ[1999-2002]
打率、長打、四死球すべてを高水準で兼ね備えた非常に高い打撃能力が持ち味で、
飛び抜けた年はないものの、三冠王時のバースに匹敵する成績を4年連続で残しました。
平均的な一塁手と比較して比較して積み上げた打撃利得は+177点で、池山青木とほぼ同値となっています。
一塁手のシーズン補殺数記録を保持しており、一塁守備による貢献も相当高かったことが窺えます。
複数年単位で全盛期を抜き出しての評価であれば、スワローズ史上最高の野手ではないでしょうか。
□石川雅規[2002-]
リーグ平均に対し与四球を40%少なく抑える制球力を武器に勝ち星を積み上げ、
通算136勝(2015年7月22日現在)は金田、松岡に次ぐ球団史上歴代3位となっています。
平均的な投手と比較して比較して積み上げた投球利得は+22点に留まり、投球内容は圧倒的とは言えませんが、
今季も含めると実働14年間で13回規定に到達しており、イニングイーターぶりは評価されてしかるべきでしょう。
また打撃も優秀で、通算で積み上げた打撃利得は現役投手中1位となっています。(
投手の打撃参照)
□東京ヤクルトスワローズ簡易oWAR10傑[-2014]
順位 | 選手名 | 守備 | 実働期間 | 年数 | 試合 | 打席 | 打率 | HR | 打点 | 盗塁 | RCW | 球場補正 | POS補正 | 守RCW | oWAR | |
1位 | 古田敦也 | 捕手 | 1990-2007 | 18年 | 2008 | 8115 | 0.294 | 217 | 1009 | 70 | 12.74 | -1.3 | 21.7 | 33.15 | 60.2 | ★ |
2位 | 若松勉 | 左翼 | 1971-1989 | 19年 | 2062 | 7590 | 0.319 | 220 | 884 | 151 | 28.71 | -1.2 | -8.9 | 18.60 | 43.9 | ★ |
3位 | 池山隆寛 | 遊撃 | 1984-2002 | 19年 | 1784 | 6531 | 0.262 | 304 | 898 | 108 | 9.83 | -0.9 | 9.1 | 18.03 | 39.8 | 次 |
4位 | 青木宣親 | 中堅 | 2004-2011 | 8年 | 985 | 4431 | 0.329 | 84 | 385 | 164 | 21.49 | -2.1 | -0.9 | 18.53 | 33.3 | 次 |
5位 | 杉浦享 | 右翼 | 1971-1993 | 23年 | 1782 | 5847 | 0.284 | 224 | 753 | 109 | 16.98 | 0.3 | -6.5 | 10.71 | 30.2 | |
6位 | 岩村明憲 | 三塁 | 1997-2014 | 12年 | 1091 | 4252 | 0.297 | 192 | 601 | 67 | 16.82 | -1.0 | -2.9 | 12.95 | 27.1 | |
7位 | D.ロバーツ | 一塁 | 1967-1972 | 6年 | 778 | 3130 | 0.277 | 181 | 485 | 22 | 21.39 | -1.6 | -4.0 | 15.79 | 26.2 | |
8位 | R.ペタジーニ | 一塁 | 1999-2002 | 4年 | 539 | 2308 | 0.321 | 160 | 429 | 21 | 23.32 | -0.4 | -4.7 | 18.26 | 25.9 | 次 |
9位 | A.ラミレス | 左翼 | 2001-2007 | 7年 | 982 | 4180 | 0.301 | 211 | 752 | 12 | 10.68 | -0.8 | -2.5 | 7.31 | 21.2 | |
10位 | 佐藤孝夫 | 中堅 | 1952-1963 | 10年 | 1275 | 4634 | 0.238 | 150 | 432 | 219 | 10.91 | 0.1 | -5.6 | 5.35 | 20.8 | |
※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCWINです。代替補正は600打席で2勝としました。□東京ヤクルトスワローズ簡易投手WAR10傑[-2014]
順位 | 選手名 | 実働期間 | 年数 | 試合 | 先発 | 投球回 | 防御率 | FIP | 勝利 | 敗戦 | RSW | 球場補正 | 守備補正 | 補RSW | WAR | |
1位 | 金田正一 | 1950-1964 | 15年 | 814 | 488 | 4920 | 2.27 | 2.34 | 353 | 267 | 53.41 | -0.39 | 3.91 | 56.93 | 122.5 | ★ |
2位 | 松岡弘 | 1968-1985 | 18年 | 660 | 398 | 3240 | 3.33 | 3.39 | 191 | 190 | 9.55 | 4.07 | 2.71 | 16.33 | 59.5 | ★ |
3位 | 安田猛 | 1972-1981 | 10年 | 358 | 160 | 1508 1/3 | 3.26 | 3.18 | 93 | 80 | 10.21 | 2.29 | 0.73 | 13.23 | 33.3 | |
4位 | 石川雅規 | 2002-2014 | 13年 | 359 | 344 | 2173 | 3.75 | 3.87 | 131 | 120 | 0.12 | 3.63 | -1.23 | 2.51 | 31.5 | 次 |
5位 | 館山昌平 | 2003-2014 | 12年 | 249 | 178 | 1254 2/3 | 3.09 | 3.38 | 78 | 55 | 8.87 | 2.53 | -0.71 | 10.69 | 27.4 | |
6位 | 尾花高夫 | 1978-1991 | 14年 | 425 | 291 | 2203 | 3.82 | 3.58 | 112 | 135 | -3.07 | -0.78 | 1.28 | -2.56 | 26.8 | |
7位 | 石井一久 | 1992-2007 | 12年 | 300 | 222 | 1528 2/3 | 3.47 | 3.48 | 98 | 63 | 6.46 | 2.67 | -2.79 | 6.34 | 26.7 | |
8位 | 村田元一 | 1957-1969 | 13年 | 459 | 284 | 2154 | 3.05 | 2.98 | 118 | 140 | -6.03 | 0.20 | 1.34 | -4.48 | 24.2 | |
9位 | 川崎憲次郎 | 1989-2000 | 12年 | 234 | 199 | 1409 | 3.63 | 4.04 | 88 | 80 | 3.80 | 1.58 | -1.78 | 3.60 | 22.4 | |
10位 | 浅野啓司 | 1967-1976 | 10年 | 372 | 134 | 1367 1/3 | 3.21 | 3.11 | 70 | 99 | -0.82 | 3.02 | 1.57 | 3.77 | 22.0 | |
※代替補正は控え投手勝率を.380と仮定して算出しました。巨 神 広 中 De [ヤ] ソ オ 日 ロ 西 楽 近 球団史上最高の4人を選ぶ
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