はじめに
ヤクルトと同様のアプローチで、NPBで「フランチャイズ・フォー」と同様の企画が実施された場合、
RCAAまとめblogとしてはどういった選手に投票するか、データを基に独断と偏見を交えて考えてみました。
今回は第12弾として、「
福岡ソフトバンクホークス」の歴代選手TOP4を選出します。
おおまかな選出の方針
・「同ポジションの平均的な控え選手に対し、どの程度利得を作れたか」(=WAR)を基軸に評価。
・基本的には通算成績の優劣で決定。長くチームに貢献した選手を優先する。
・通算成績がほとんど横並びの場合、全盛期の優劣で決定。
・「球団史上」なので、MLB期間の成績については一切考慮しない。
以上を踏まえて、RCAAまとめblogが選出した「福岡ソフトバンクホークス最高の4人」は以下のようになりました。
福岡ソフトバンクホークス史上最高の4人
□野村克也[捕手/24年/1954-1977]
※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCAAを示します。ご存知、プロ野球史上最高の捕手。通算2813安打は球団史上歴代1位。
同ポジションの平均的な選手(捕手)に対して+792点の打撃利得を稼ぎました。こちらも球団史上歴代1位。
最も多くの試合で4番先発出場を記録した、4番打者の中の4番打者でもあります。(参考:
日本プロ野球私的統計研究会様)
本塁打王9回、打点王7回は、共に王貞治に次いで2番目に多い記録。1965年には捕手として唯一の三冠王も獲得しています。
捕手としては過剰とも言える打撃能力を持つ野村が在籍することにより、当時の南海が得たアドバンテージは計り知れません。
実働年数の長さも鑑みるに、キャリア全体の評価では王貞治に次いでNPB歴代2番目の野手ではないかと考えられます。
守備に関しては、南海時代は最後の1977年まで優秀な盗塁阻止能力を持っていたようで、年齢を考えると驚異的とも言えますが、
ロッテ、西武移籍後には大幅に数値を落としています。南海投手陣にクイックモーションが普及していた証左かもしれませんね。
若い頃は捕逸・失策が共に少なかったようですが、選手兼任監督となってからは負担が増えた影響か大幅に増加しており、
守備全体を評価する際には、この部分に起因するマイナスが無視できないレベルになっています。
□門田博光[指名打者・右翼手/21年/1970-1992]
※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCAAを示します。44歳まで長く主砲として活躍した「不惑の大砲」。通算2317安打は球団歴代2位。
同ポジションの平均的な選手(指名打者・右翼手)に対して+324点の打撃利得を稼ぎました。
打者として特筆すべき点は、鈍足のホームランバッターとしては異質とも言えるBABIP傑出の高さ(1.06倍)で、
決して三振の少ない打者ではなかった門田が、高打率とHRを両立させる大きな要因となったようです。
長距離打者はプルヒッターが多く、守備側も対策がしやすいのかBABIPは一般的に平凡な値であることが多いのですが。
(例を挙げると、王貞治(1.00倍)、野村克也(0.98倍)、田淵幸一(0.87倍)、土井正博(0.98倍)など枚挙に暇がありません)
他に落合博満(1.06倍)も同様の傾向を示しています。これは広角に強い打球を量産する打者の特徴なのかもしれませんね。
長所は打撃だけでなく、アキレス腱断裂前は高い守備能力を持つ右翼手でもありました。
売りの強肩を活かして同時代の右翼手と比較しても明確に多い補殺数を記録しているほか、
守備範囲も非常に広かったようで、1977年にはほぼ右翼手としての出場でシーズン300刺殺も記録しています。
右翼での出場割合が80%を超えているシーズンに、300外野刺殺を記録した選手は直近半世紀では門田のみとなっています。
□広瀬叔功[中堅手・遊撃手/23年/1955-1977]

※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCAAを示します。歴代屈指の盗塁成功率を誇った、南海黄金時代のリードオフマン。通算2157安打は球団歴代3位。
同ポジションの平均的な選手(中堅手・遊撃手)に対して+163点の打撃利得を稼ぎました。
通算596盗塁は「世界の盗塁王」福本豊に次ぐ歴代2位の記録。
精度を多少犠牲にしてでも量を重視した福本に対し、広瀬の盗塁は数を抑えつつ精度を重視したものであったようで、
盗塁成功率82.9%は200盗塁以上の選手では最高値となっています。(福本は78.1%)
キャリア全体での盗塁利得(wSB)は+66点で、こちらも福本の+90点に次ぐ歴代2位の記録です。
打者としての特徴は早打ちによる三振の少なさで、50三振以上は1962年の一度のみ。
三振/打数の傑出度は新井宏昌、若松勉に次ぐ2000本安打達成者では歴代3位の低水準となっており、
持ち前の俊足によるBABIP傑出の高さと合わせて、打低時代に安定して3割付近の打率を記録する原動力となったようです。
そして特筆すべきはその中堅守備。1963年にはセパ分立以降最多の353外野刺殺を記録する広大な守備範囲を誇り、
同時代の中堅手に対する刺殺数の傑出具合は、後年の山本浩二・福本豊らを大きく上回る歴代トップクラスの数値を記録。
現状で得られるデータの中からの判断では、NPBオールタイム・ゴールデングラブ外野手の最有力候補だと考えられます。
□皆川睦雄[投手/18年/1954-1971]

南海投手陣を細長く支え、最後に大輪の花を咲かせた縁の下の力持ち投手。通算221勝は球団歴代最多。
平均的な投手に対して+201点の投球利得を稼ぎました。こちらは球団で杉浦に次ぐ記録です。
キャリア終盤まで300投球回と20勝を一度も記録しておらず、当時のエース投手と比較するとやや物足りない稼働量ながら、
防御率は安定して優秀で、投手陣に定着してからは晩年まで負け越した年が一つもありませんでした。
異変が起きたのは1968年。33歳とベテランの域に入っていた皆川は突如として伝説的な投球を見せました。
シーズン30勝及びシーズンRSWIN7勝台は、この年の皆川を最後に日本プロ野球では記録されていません。
奪三振、与四球、被本塁打の全てが平均的な投手より少ない、精度で勝負する型の投手だったようですが、
恐らく被BABIPの低さが原因で、バックの守備能力を考慮しても説明が付かないくらいFIPと防御率が離れています。
山田久志や足立光宏の項でも触れましたが、これはこの時代のアンダースロー投手の特徴の一つなのかもしれませんね。
次点
□杉浦忠[投手/13年/1958-1970]
NPBの歴史で稀有なアンダースローのパワーピッチャー。通算187勝は球団歴代2位。
平均的な投手に対して+221点の投球利得を稼ぎました。これは球団歴代最高値。
杉浦と言えば、何といっても1959年の大活躍。38勝4敗で1シーズンに34の勝ち越しを記録しました。
1シーズンで30以上の勝ち越しはこの年の杉浦のみ。次点は1957年稲尾和久の29(35勝6敗)となっています。
この年に記録したRSWIN8.90は12球団制移行後最高記録で、今後の更新はおそらく不可能だと考えられます。
□松中信彦[一塁手・指名打者/18年/1997-2014]
ダイハード打線の中軸を担ったNPB最後の三冠王。通算1766安打は球団歴代4位。
平均的な同ポジションの選手(一塁手・指名打者)に対して+294点の打撃利得を稼ぎました。
王貞治と同じく極端な左のプルヒッターでシフトを敷かれることが多かったせいか、BABIP傑出は0.98倍と平均を下回りますが、
こうした弱点を抱えながら高打率を記録しています。これはHRバッターの中ではかなり低い三振率が背景にあったようですね。
2004年福岡ドームの得点PFは0.88で、三冠王を輩出したチームの本拠地としては歴代で最も低い値となっています。
□城島健司[捕手/11年/1995-2005]
ダイエー黄金時代の扇の要。捕手で実働は11年しかないものの通算211HRは球団歴代5位。
平均的な同ポジションの選手(捕手)に対して+285点の打撃利得を稼ぎました。
極端な早打ちで三振四球が非常に少ない打者です。打数ベースで見ると捕手の中では森昌彦に次ぐ三振の少なさで、
鈍足の右打者で内野安打の稼げない城島が、高打率を維持する大きな要因となりました。
直近30年間のNPBにおいて、盗塁阻止率.383は古田敦也(.462)に次ぐ記録。攻守ともに優れた捕手だったようです。
□飯田徳治[一塁手/10年/1947-1956]
鶴岡監督の築いた100万ドルの内野陣の一角。通算321盗塁は球団歴代3位。
平均的な同ポジションの選手(一塁手)に対して+216点の打撃利得を稼ぎました。
NPBの歴史全体を見ても稀有な「走れる一塁手」であり、一塁手としてシーズン40盗塁を4度記録。
1953年と1954年に記録したシーズン48盗塁は一塁手では最多、通算390盗塁も一塁手最多記録となっています。
機動力だけでなく打者としても三振率・奪四球・長打力・BABIPで全て平均以上を記録しており、穴の無い打者だったようです。
□福岡ソフトバンクホークス簡易oWAR10傑[-2014]
順位 | 選手名 | 守備 | 実働期間 | 年数 | 試合 | 打席 | 打率 | HR | 打点 | 盗塁 | RCW | 球場補正 | POS補正 | 守RCW | oWAR | |
1位 | 野村克也 | 捕手 | 1954-1977 | 24年 | 2827 | 11534 | 0.279 | 645 | 1940 | 116 | 62.64 | -0.61 | 25.10 | 87.13 | 125.6 | ★ |
2位 | 門田博光 | DH | 1970-1992 | 21年 | 2336 | 9288 | 0.289 | 503 | 1494 | 51 | 47.97 | 2.42 | -17.00 | 33.39 | 64.4 | ★ |
3位 | 松中信彦 | 一塁 | 1997-2014 | 18年 | 1771 | 6995 | 0.297 | 352 | 1167 | 28 | 40.32 | 2.66 | -13.54 | 29.43 | 52.7 | 次 |
4位 | 広瀬叔功 | 中堅 | 1955-1977 | 23年 | 2190 | 8246 | 0.282 | 131 | 705 | 596 | 24.72 | -1.36 | -4.99 | 18.37 | 45.9 | ★ |
5位 | 城島健司 | 捕手 | 1995-2005 | 11年 | 1117 | 4496 | 0.299 | 211 | 699 | 63 | 14.46 | 1.77 | 11.76 | 27.98 | 43.0 | 次 |
6位 | 飯田徳治 | 一塁 | 1947-1956 | 10年 | 1265 | 5394 | 0.295 | 151 | 778 | 321 | 29.34 | 0.00 | -6.56 | 22.78 | 40.8 | 次 |
7位 | 小久保裕紀 | 三塁 | 1994-2012 | 16年 | 1702 | 6924 | 0.270 | 319 | 1066 | 56 | 20.12 | 2.56 | -6.22 | 16.45 | 39.5 | |
8位 | 吉永幸一郎 | 捕手 | 1988-2000 | 13年 | 1196 | 4318 | 0.279 | 150 | 497 | 4 | 12.26 | 1.38 | 1.04 | 14.68 | 29.1 | |
9位 | 鶴岡一人 | 三塁 | 1939-1952 | 8年 | 754 | 3106 | 0.295 | 61 | 467 | 143 | 17.92 | 0.00 | 0.55 | 18.48 | 28.8 | |
10位 | 岡本伊三美 | 二塁 | 1949-1963 | 15年 | 1289 | 4467 | 0.257 | 125 | 513 | 182 | 9.92 | -0.44 | 3.14 | 12.62 | 27.5 | |
※守備位置補正は守備位置補正RCWINの方法で算出しました。「守RCAA」は球場補正を含めた守備位置補正RCAAを示します。代替補正は600打席で2勝としました。□福岡ソフトバンクホークス簡易投手WAR10傑[-2014]
順位 | 選手名 | 実働期間 | 年数 | 試合 | 先発 | 投球回 | 防御率 | FIP | 勝利 | 敗戦 | RSW | 球場補正 | 守備補正 | 補RSW | WAR | |
1位 | 皆川睦雄 | 1954-1971 | 18年 | 759 | 327 | 3158 | 2.42 | 2.82 | 221 | 139 | 27.51 | 2.54 | -7.58 | 22.48 | 64.6 | ★ |
2位 | 杉浦忠 | 1958-1970 | 13年 | 577 | 217 | 2413 1/3 | 2.39 | 2.57 | 187 | 106 | 26.47 | 2.77 | -4.50 | 24.74 | 56.9 | 次 |
3位 | 杉内俊哉 | 2002-2011 | 10年 | 225 | 218 | 1520 1/3 | 2.92 | 2.88 | 103 | 55 | 19.01 | -2.45 | -1.85 | 14.70 | 35.0 | |
4位 | 三浦清弘 | 1957-1972 | 16年 | 489 | 244 | 2017 1/3 | 3.02 | 3.42 | 119 | 92 | 6.45 | 1.59 | -2.79 | 5.25 | 32.1 | |
5位 | 柚木進 | 1948-1956 | 9年 | 281 | 163 | 1511 2/3 | 2.49 | 2.68 | 123 | 64 | 16.64 | 0.00 | -4.83 | 11.81 | 32.0 | |
6位 | 和田毅 | 2003-2011 | 9年 | 210 | 207 | 1444 2/3 | 3.13 | 3.33 | 107 | 61 | 16.39 | -2.46 | -2.23 | 11.70 | 31.0 | |
7位 | 山内孝徳 | 1981-1992 | 12年 | 319 | 254 | 1842 1/3 | 4.43 | 3.97 | 100 | 125 | -6.23 | -0.81 | 6.19 | -0.85 | 23.7 | |
8位 | 山内和宏 | 1981-1990 | 10年 | 290 | 233 | 1662 2/3 | 4.20 | 4.24 | 92 | 107 | -3.23 | -0.74 | 5.15 | 1.19 | 23.4 | |
9位 | J.スタンカ | 1960-1965 | 6年 | 232 | 209 | 1314 1/3 | 2.90 | 3.23 | 94 | 59 | 5.60 | 1.82 | -2.19 | 5.24 | 22.8 | |
10位 | 山内新一 | 1973-1983 | 11年 | 309 | 303 | 2126 | 3.73 | 3.79 | 121 | 121 | -1.78 | -4.91 | 0.98 | -5.70 | 22.6 | |
※代替補正は控え投手勝率を.380と仮定して算出しました。巨 神 広 中 De ヤ [ソ] オ 日 ロ 西 楽 近 球団史上最高の4人を選ぶ
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