□はじめにこの記事ではMLBにおいて権威のある表彰の一つである
シルバースラッガー賞に倣い、
今回はwRAAを用いて「打撃貢献度の最も高かった選手」をポジション別に選出したいと思います。
□具体的な評価方法
上表は先発出場守備位置から推計した、2015年パリーグにおけるポジション別平均打撃成績となります。
表中に示される「ポジションの平均的な打者」との比較を基軸にして、ポジション別に最優秀打者を決定していきます。

例として「パリーグの平均的な遊撃手」と「ソフトバンクの今宮健太」の打撃成績を並べるとこのようになります。
今宮の成績は遊撃手平均を下回っているため、2つの成績の比較から今宮の打撃貢献をwRAAを用いて調べると、
「
今宮健太は平均的な遊撃手と比較してチームの総得点を3点減らした」という結果が得られますが、
これを最終評価としてしまうと「出場0の遊撃手(±0点)」の評価が「今宮健太(-3点)」より高くなるという結果になりかねません。
「平均的な遊撃手」と言えど、全てのチームが平均的な遊撃手をいつでも取り揃えることができる訳ではなく、
正捕手が故障離脱したことによって、打力の劣る控え遊撃手が先発起用される場面は実際のプロ野球でも度々見られます。
つまり、「年間を通して平均程度の活躍ができる選手」というのはそれだけで一定の価値があるものだと考えられます。
この点を考慮してやるために、今回は「同ポジションの平均的な控え選手」との比較を最終評価としました。
球場補正については2013年-2015年の得点PF値を使用しました。
平均的な選手と控え選手の打力差は「600打席で20点分」としました。(参考:
WAR Lords of the Diamond(Position Players))
□表の見方
ソフトバンクの
今宮健太を例に挙げると、
「遊撃手」として出場した打席で「平均的な控え遊撃手」と比べて、打撃で「+14点分」チームの総得点を増やした
「遊撃手」として出場した打席で「平均的な 遊撃手」と比べて、打撃で「
-3点分」チームの総得点を増やした
ということを示しています。前述の通り、今回は控え選手比較の数値(左側)を最終評価としました。
各ポジションで20試合以上に先発出場した選手について同様に調べ、ランキングを作成しました。
捕手(捕手先発出場20試合以上)

日本ハムの
近藤健介がパ捕手1位となります。平均的な控え捕手に対して+30点の打撃利得を稼ぎました。
同僚の
大野奨太の復帰で7月以降は捕手からDHに回りましたが、捕手平均打率が2割前後に低迷する中、
近藤は3割を優に超える打率を記録し、出場機会は少ないながらもチームに大きな利得をもたらしました。
奪四球力に優れる
嶋基宏と、近藤に次ぐ高打率を記録した
伊藤光の2人も例年通りの高い貢献を見せました。
一塁手(一塁手先発出場20試合以上)

日本ハムの
中田翔がパ一塁手1位となります。平均的な控え一塁手に対して+33点の打撃利得を稼ぎました。
兼任制を敷くチームがいくつか見られたため、一塁手を通年で固定できたのは日本ハム(中田)と西武(メヒア)だけでした。
李大浩は出場機会あたりの貢献では中田を上回っていますが、DHに出場が分散しているため惜しくも2位となります。
二塁手(二塁手先発出場20試合以上)

西武の
浅村栄斗がパ二塁手1位となります。平均的な控え二塁手に対して+33点の打撃利得を稼ぎました。
また、3年ぶりの日本球界復帰となった
田中賢介も打撃の健在ぶりをアピールしています。
ソフトバンクは
本多雄一が大不振に陥りましたが、
川島慶三・
明石健志が良い働きを見せて穴を埋めました。
三塁手(三塁手先発出場20試合以上)

ソフトバンクの
松田宣浩がパ三塁手1位です。平均的な控え三塁手に対して+43点の打撃利得を稼ぎました。
今季はリーグ本塁打王(中村)、本塁打2位(松田)、本塁打3位(レアード)が並ぶ大激戦区となりました。
シーズン終盤には楽天の4番打者に固定された
ウィーラーも、出場機会が少ない中でよい働きを見せています。
遊撃手(遊撃手先発出場20試合以上)

ロッテの
鈴木大地がパ遊撃手1位です。平均的な控え遊撃手に対して+33点の打撃利得を稼ぎました。
日本ハムの
中島卓也、オリックスの
安達了一も僅差でした。いずれの選手も20代であり、世代交代が進んだ印象がありますが、
パリーグ遊撃手の平均打力は一昔前と比較すると、依然として大きく低迷しています。
左翼手(左翼手先発出場20試合以上)

日本ハムの
西川遥輝がパ左翼手1位となります。平均的な控え左翼手に対して+26点の打撃利得を稼ぎました。
今季のパリーグにおいて、左翼手は捕手遊撃手二塁手に次ぐ貧打のポジションとなりました。
両リーグ左翼手のUZRの格差を見ても、パリーグでは益々守備重視の起用傾向が強まっている印象を受けます。
中堅手(中堅手先発出場20試合以上)

ソフトバンクの
柳田悠岐がパ中堅手1位となります。平均的な控え中堅手に対して+82点の打撃利得を稼ぎました。
柳田と
秋山翔吾が歴史的な活躍を見せた結果、パリーグ中堅手の平均打力は大幅に引き上げられ、
2人を除くパリーグの全中堅手が平均比較でマイナスを生み出す状態となりました。
右翼手(右翼手先発出場20試合以上)

ロッテの
清田育宏がパ右翼手1位です。平均的な控え右翼手に対して+46点の打撃利得を稼ぎました。
清田はこの数年間、あと一歩のところで燻ぶっている印象でしたがとうとうブレイクしましたね。
前半戦で絶不調だった
糸井嘉男も終盤の追い上げでまずまずの水準に乗せています。
指名打者(指名打者先発出場20試合以上)

楽天の
ペーニャがパ指名打者1位となります。平均的な控え指名打者に対して+25点の打撃利得を稼ぎました。
ただし、出場機会あたりの貢献では一塁手と兼業だった
李大浩、捕手と兼業だった
近藤健介の方が上となります。
また、弱冠20歳の
森友哉も激戦区の中で大活躍を見せましたが、
守備でもチームに貢献できる年齢の内からDHで起用するのはちょっと勿体ない印象を受けました。
総評

当ブログの選出する、2015年パリーグの各ポジション最優秀打撃選手は以上のようになります。
こうして俯瞰すると、パリーグは打つポジションと守るポジションが明確に分かれている気がしますね。
日本ハムはコンバート勢3人が入る結果となりました。

出場した全ポジションでの打撃貢献合計値40傑です。パリーグにおける打のMVPは
柳田悠岐となります。
昨年に続いて、若手日本人打者の台頭が著しい1年となりました。
ポジション別に最優秀打者を選ぶ(セリーグ編) 2015年私的シルバースラッガー賞おまけ:昨年はこんな感じでした
2014年私的シルバースラッガー賞[パリーグ編]