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2016年広島打線、得点力向上の要因は?

広島、好調打線で首位に=一発に小技、多彩な攻め(時事通信)
広島の緒方監督は、「スカッとする試合だ」と心地よさそうに笑った。3本塁打を含む14安打を放つ快勝で、
首位に浮上したのだから無理もない。 (中略) 緒方監督は4安打5打点の活躍を見せた松山を「4番の働き」と絶賛した。
脇役もしっかり働いて両リーグ断トツトップの247得点を誇る打線が、チームを2週間ぶりの首位に引き上げた。

2016年の広島東洋カープは春先から打線が好調で、得点力によるアドバンテージを得た状況となっています。
各球団の得点力の格差が非常に小さかった昨季の状況から、広島は如何にして一歩抜けた存在になったのでしょうか?
まずはチーム編成の観点からその要因を探りたいと思います。

編成の観点から要因を探る

wOBAを用いてポジション別の得点力への寄与を評価し、得点力向上の要因を探ります。
守備位置の推定には先発出場守備位置を使用し、球場補正は共に2013年-2015年の得点PFを用い、
「同年同ポジションの平均と比較して、打撃でチームの得点を何点分増やしたと評価されるか」を調べました。

広島得点力2015
※例:2015年田中広輔は平均的な遊撃手が同じ打席数を消化する場合に比べて、打撃で8点分多く得点を生み出したことを示す。

広島得点力2016
※例:2016年菊池涼介は平均的な二塁手が同じ打席数を消化する場合に比べて、打撃で6点分多く得点を生み出したことを示す。

現在のペースを維持できれば、シーズン終了時点で2016年の各数値はおよそ3倍となります。(現在がシーズンの1/3時点であるため)
2015年時点では弱点となるポジションを複数抱えていたのに対して、2016年は弱点が塞がった様子が見て取れますが、
その要因としては「選手層の変化による改善」と「既存選手の復調による改善」の二つが挙げられます。

選手層の変化による改善

まずは「選手層の変化による改善」について見ていきます。
各ポジションを構成する選手の顔ぶれを見ると、特に三塁・左翼・右翼で選手が大きく入れ替わりました。
結果としていずれのポジションでも打撃得点は大幅に改善しており、編成面でのテコ入れは成功した形となっています。

広島得点力入れ替え

最も大きなテコ入れが行われたのが三塁手です。レギュラーの梵英心に見切りを付ける形でルナを獲得、
中日時代と変わらない高い出塁能力を如何なく発揮し、三塁平均を上回る打撃貢献を残していましたが、
4月中盤に太ももを痛めて故障離脱すると代替要員として新鋭の安部友裕が抜擢され、これが上手くはまりました。

右翼手は昨季は最も固定率が低かったものの、その中で最も高い打撃貢献を残した鈴木誠也が今季は固定されました。
左翼手はテコ入れとは毛色が違いますが、エルドレッドの好調ぶりが得点力向上に大きく貢献しているほか、
出場増により相対的に打撃の劣る他の選手の出場機会を減らしたことも要因の一つとなっています。

昨季は三塁・左翼・右翼でリーグ平均に対して10点少ない得点しか生み出すことができませんでしたが、
今季は既にリーグ平均に対して26点多く得点を生み出しており、フルシーズン換算では78点まで伸びる見込みとなっています。
選手層の変化による三塁・左翼・右翼の打撃改善が、チームの得点力向上の大きな要因となったようです。

既存選手の復調による改善

次は「既存選手の復調による改善」について見ていきます。
2015年-2016年の広島において、捕手・一塁・二塁・遊撃・中堅はポジションを構成する選手がほぼ同一となっています。
顔ぶれの変わっていない5ポジションの打撃得点推移は以下のようになっています。

広島得点力復調2
※丸の数値は一見下がっているように見えますが、2016年の数値はフルシーズン換算では39点で前年を上回るペースとなっています。

昨季は捕手・一塁・二塁・遊撃・中堅でリーグ平均に対して29点多く得点を生み出しましたが、
今季は既にリーグ平均に対して21点多く得点を生み出しており、フルシーズン換算では63点まで伸びる見込みとなっています。
レギュラーの好調ぶりも得点力を下支えする要因になっていると言えるのではないでしょうか。

広島打線の今後は?

最後に広島打線の今後を占う為に、打撃内容にまで踏み込んで見ていきます。
2015年と2016年の広島打線の主要オーダーと、リーグ平均と比較した各打撃内容を以下にまとめました。

広島得点力打線3
※「○○+」はリーグ平均を100としたときのBABIP、三振/打席(K%)、四球/打席(BB%)、長打力-打率(ISO)の傑出度を示す。
※「wRC+」はリーグ平均を100としたときの打撃による得点創出力傑出度を示す。

チーム全体の打撃内容を見ると、BABIP上昇が得点力向上に対して最も大きく寄与しているようです。
昨季のチームBABIPはリーグ平均程度だったのに対し、今季はリーグ平均の1.1倍近い数値を記録していますが、
この数値は12球団制移行後で最も高かった1958年巨人打線を上回っており、歴史的に見ても高水準の数値となっています。

キャリア標準に対して異常に高いBABIPを残す打者の多さがこの背景にはあるようですが、(新井貴浩・エルドレッドなど)
「短期的なスパンでは運の要素が強く、打席数の増加に伴いキャリア標準に対して収束する」というBABIPの特性を考えると、
今後も同じだけの得点力を継続していけるかと問われれば、やや不安を残ると言わざるを得ません。

一方で三振(K%-)が減り、四球(BB%+)が増え、長打(ISO)も増えるなど再現性の強い項目でも改善が見られることから、
打線の潜在的な得点力が上昇しているのは間違いありません。現在ほど強力なアドバンテージを維持し続けるのは難しいでしょうが、
打線が広島のペナントレースを牽引していく状況は今後も続いていくのではないでしょうか。

コメント

いつも興味深い記事を、たのしく読まさせてもらってます

BABIPについて教えて頂きたいことがあるのですが、「BABIPは振れ幅が大きい指標なので、単年だけで適性BABIPを判断するのは危険」という解説を、先日掲示板で見かけました

その後自分で調べたところ、イチロー選手や柳田選手のように、適性BABIPの高いバッターが、数が少ないながらも存在するということも知りました

それでは、対象にする打者の「適性BABIP」を判断するためのサンプル数は、どのくらいの打席数が必要なのでしょうか?

Re: タイトルなし

開聞岳さん、コメントありがとうございます!

BABIPに関してはBaseball-Labのこちらのコラムが非常に参考になると思います。
http://www.baseball-lab.jp/column/entry/175/

対象にする打者の「適性BABIP」を判断するために必要なサンプル数は、おおむね「800BIP」程度であるようですね。
打者のタイプによって若干異なりますが、打席数に換算すればおよそ1100打席程度だと思われます。

記事の紹介ありがとうございます とても参考になりました
そして自分が予想していたよりも、BABIPの予想はかなり難しいのだな、と思いました

現在広島が記録している、チームBABIP傑出度の高さが日本では一例しかないとなると、BABIPが平均値に戻る「可能性は高い」と見た方がいいですね

広島主力打者のライナー率やSpdは今のところ優秀な数字を記録しているので、BABIPの推移も緩やかになる「可能性は高い」のかも知れませんが(笑)

Re: タイトルなし

開聞岳さん、ご返信ありがとうございます!

打線を構成するメンバーの通算BABIPを元に打線全体の適性BABIPを考えると、
今のメンバーで歴代最高のチームBABIP傑出度を維持するのはかなり厳しいのではないかというのが論拠ですね。
例えばエルドレッドのBABIPが例年並みになるだけで、チームBABIP傑出度は1.05倍付近まで落ちてしまいます。

ただそれでも仰る通り広島打線の適性BABIPはリーグ平均よりやや高めではあるようなので、
最終的にはその辺りに落ち着くのではないかと思って見ています。

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 現役20代選手の通算安打(2018年版)

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 現役20代選手の通算安打(2017年版)
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 2017年各種パークファクター
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 2016年広島打線、得点力向上の要因は?
 2016年各種パークファクター
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