記事一覧

当ブログについて

NPB2022

NPB2021

選手

打線

投手陣

球場

記録

分析

鈴木啓示の先発勝利は287勝ではないかという話

鈴木 啓示(日本プロ野球名球会公式ホームページ)
日本記録
・1シーズン10勝以上 15年連続合計18回(1966~1980、1982~1984)
・開幕投手 8年連続(歴代2位)合計14回(1967~1974、1977~1980、1984、1985)
・開幕戦勝利 通算9勝
・開幕戦完封勝利 通算4回(1967、1969、1977、1979)
・先発勝利 通算288勝
・10連続完投勝利(1978/7/29対南海~9/6対日本ハム)
・6年連続奪三振王(1967~1972)
・4試合連続無四死球試合(1978/8/11~24)


NPB最後の300勝投手、鈴木啓示の先発勝利数は一般に288勝とされているのですが、
歴代投手の先発投球成績を調べていて、これより1勝少ない287勝ではないかという疑念が湧いたので、
お世話になっている日本プロ野球記録さんのデータを元に検証を行ってみました。

公式記録によれば鈴木啓示の先発登板は577試合とあり、
試合別のデータでも同数の577試合において鈴木啓示の先発登板が確認できます。

鈴木啓示の所属する近鉄はこの内21試合で相手チームと引き分け、245試合で相手チームに敗れています。
すなわち残りの311試合の中に全ての鈴木啓示の先発勝利が含まれていると考えられますが、
この中の287試合でしか先発勝利は確認できず、残りの24試合は全て救援投手に勝利が記録されています。

1966/06/25 近鉄東映11回戦    近鉄 *4-1 東映  先発:鈴木啓示 ○山本重政
1966/08/24 近鉄南海18回戦    近鉄 *5-4 南海  先発:鈴木啓示 ○長田裕之
1967/07/19 近鉄東映14回戦    近鉄 *6-5 東映  先発:鈴木啓示 ○板東里視
1967/09/06 近鉄南海18回戦    近鉄 *5-3 南海  先発:鈴木啓示 ○佐々木宏一郎
1967/09/09 近鉄阪急24回戦    近鉄 *5-4 阪急  先発:鈴木啓示 ○橋本孝志
1968/04/06 近鉄西鉄01回戦    近鉄 *3-1 西鉄  先発:鈴木啓示 ○板東里視
1968/06/09 近鉄西鉄09回戦    近鉄 *4-3 西鉄  先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1968/09/08 近鉄西鉄26回戦    近鉄 *6-5 西鉄  先発:鈴木啓示 ○川内八洲男
1970/07/12 近鉄東映11回戦    近鉄 *5-4 東映  先発:鈴木啓示 ○佐々木宏一郎
1970/07/29 近鉄東映13回戦    近鉄 *3-2 東映  先発:鈴木啓示 ○清俊彦 
1970/08/02 近鉄南海15回戦    近鉄 *6-4 南海  先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1972/07/18 近鉄西鉄11回戦    近鉄 *5-4 西鉄  先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1972/09/09 近鉄西鉄20回戦    近鉄 *6-4 西鉄  先発:鈴木啓示 ○清俊彦 
1972/10/10 近鉄西鉄26回戦    近鉄 *6-2 西鉄  先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1974/06/02 近鉄ロッテ前期10回戦 近鉄 *8-6 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○佐々木宏一郎
1974/09/04 近鉄南海後期10回戦  近鉄 *7-3 南海  先発:鈴木啓示 ○板東里視
1978/04/13 近鉄南海前期02回戦  近鉄 12-3 南海  先発:鈴木啓示 ○柳田豊
1979/05/22 近鉄ロッテ前期06回戦 近鉄 *7-4 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○山口哲治
1979/07/19 近鉄ロッテ後期02回戦 近鉄 13-6 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○井本隆
1981/08/30 近鉄ロッテ後期08回戦 近鉄 *7-4 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○橘健治
1981/09/23 近鉄ロッテ後期12回戦 近鉄 *7-6 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○福井保夫
1982/06/28 近鉄南海前期12回戦  近鉄 *5-4 南海  先発:鈴木啓示 ○久保康生
1985/04/06 近鉄西武01回戦    近鉄 *9-7 西武  先発:鈴木啓示 ○久保康生
1985/04/25 近鉄南海05回戦    近鉄 *7-6 南海  先発:鈴木啓示 ○高橋里志

上記の試合以外に鈴木啓示先発で近鉄が勝った試合が存在する可能性ですが、
鈴木啓示の現役時代(1966年-1985年)のパリーグにおける全試合のスコアと勝敗について、
試合単位データの合計値と年間成績の整合性は確認済みなので、勝敗の取り違えは考えにくいと思われます。

次に鈴木啓示に記録されるべき勝利が誤って救援投手に記録されている可能性ですが、
上記の試合でその仮定を行うと、鈴木啓示と各投手の年間勝利数と試合単位データの合計値の整合性が崩れるので、
この方面で記録の取り違えが起こっている可能性も考えにくいのではと思われます。

次に各試合のデータにおいて「鈴木啓示が先発している」という情報が間違っている可能性ですが、
鈴木啓示の先発回数について試合単位データの合計値と年間成績の整合性は確認済みで、
かつ各試合中の選手個人成績の合計値が試合全体のスコアと一致していることから、こちらも考えにくいと思われます。

以上の理由から先発勝利が287勝だと考えると年間成績との整合性がよく取れるので、
一般に流通している数字である「先発288勝」は間違いではないかと考えたのですが、
もうひとつ気付いたのが救援勝利の方がどうも30勝分あるということ。こちらも従来では29勝とされています。

1966/05/24 近鉄東映08回戦     近鉄 *6-5 東映   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1966/07/05 近鉄東京13回戦     近鉄 *5-3 東京   先発:徳久利明   ○鈴木啓示
1966/08/28 近鉄西鉄19回戦     近鉄 *9-8 西鉄   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1967/09/27 近鉄東映25回戦     近鉄 *4-3 東映   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1968/04/09 近鉄南海01回戦     近鉄 *2-1 南海   先発:田辺修    ○鈴木啓示
1968/04/16
 近鉄東映01回戦     近鉄 *7-6 東映   先発:田辺修    ○鈴木啓示
1968/04/21 近鉄南海03回戦     近鉄 *5-2 南海   先発:板東里視   ○鈴木啓示
1968/04/30 近鉄西鉄05回戦     近鉄 *4-2 西鉄   先発:清俊彦    ○鈴木啓示
1968/05/24 近鉄東映07回戦     近鉄 *4-1 東映   先発:清俊彦    ○鈴木啓示
1968/06/26 近鉄東京13回戦     近鉄 *5-4 東京   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1968/10/11
 近鉄南海27回戦     近鉄 *6-4 南海   先発:板東里視   ○鈴木啓示
1969/06/24 近鉄阪急10回戦     近鉄 *9-2 阪急   先発:バッキー   ○鈴木啓示
1970/05/02 近鉄南海05回戦     近鉄 *3-2 南海   先発:岡田光雄   ○鈴木啓示
1970/08/30 近鉄南海10回戦     近鉄 12-6 南海   先発:板東里視   ○鈴木啓示
1970/09/16 近鉄西鉄23回戦     近鉄 *3-2 西鉄   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1971/08/13
 近鉄西鉄17回戦     近鉄 *9-6 西鉄   先発:神部年男   ○鈴木啓示
1971/08/15 近鉄西鉄20回戦     近鉄 *3-2 西鉄   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1972/07/02 近鉄阪急12回戦     近鉄 *2-1 阪急   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1972/07/08 近鉄ロッテ11回戦    近鉄 *4-3 ロッテ  先発:清俊彦    ○鈴木啓示
1973/04/29 近鉄阪急前期04回戦   近鉄 *7-6 阪急   先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1973/05/12
 近鉄太平洋前期05回戦  近鉄 *9-8 太平洋  先発:太田幸司   ○鈴木啓示
1974/08/02 近鉄太平洋後期03回戦  近鉄 *2-1 太平洋  先発:太田幸司   ○鈴木啓示
1975/07/09 近鉄南海後期02回戦   近鉄 *9-4 南海   先発:太田幸司   ○鈴木啓示
1975/08/27 近鉄南海後期12回戦   近鉄 *6-5 南海   先発:井本隆    ○鈴木啓示
1975/10/04 近鉄日本ハム後期12回戦 近鉄 *3-2 日本ハム 先発:柳田豊    ○鈴木啓示
1976/04/04 近鉄阪急前期02回戦   近鉄 *6-4 阪急   先発:柳田豊    ○鈴木啓示
1976/08/08 近鉄日本ハム後期05回戦 近鉄 *3-2 日本ハム 先発:井本隆    ○鈴木啓示
1977/04/26 近鉄ロッテ前期03回戦  近鉄 *2-1 ロッテ  先発:柳田豊    ○鈴木啓示
1979/04/22 近鉄南海前期05回戦   近鉄 *4-3 南海   先発:柳田豊    ○鈴木啓示
1985/04/29 近鉄阪急05回戦     近鉄 *3-2 阪急   先発:小山昌男   ○鈴木啓示

こちらも年間記録との整合性から、誤りであるとは考えにくいように思われます。
先程の検討で先発勝利の見落としがあると仮定すると、合計318勝となって「合計317勝」が間違いになるため、
少なくとも「先発288勝」か「合計317勝」のどちらかが誤りである可能性が高いと考えられます。

288勝という数字がどこから出てきたのか分かりませんが、名球会の人は一度調べてみたほうが良いと思います。
おそらく救援勝利の一つが誤って先発勝利として集計された可能性が高いと考えますが、
この件に関して事情を知っている方がいれば詳細を教えて下さい。



追記(2016年10月1日)

三浦 平松超え先発167勝!2年目からずっと先発 41歳プロ24年目(スポニチアネックス)
≪平松超え≫三浦(D)が今季4勝目を挙げ通算170勝に到達。うち、先発では167勝目(救援で3勝)になった。
先発勝利の歴代最多記録は鈴木啓示(近鉄)の287勝だが、三浦の167勝は野口二郎(阪急)に並ぶ歴代22位タイ。
チームでは平松政次の166勝(通算201勝)を抜く最多記録になった。

2015年7月13日の記事。NPB-BISでは「先発287勝」になっている可能性が高い?


追記(2016年10月11日)

広島黒田7回無失点、野茂に並んだ日米最多201勝(日刊スポーツ)
▼黒田が日米通算201勝目(日122勝、米79勝)を挙げ、野茂(ロイヤルズ)の日米通算最多勝利記録に並んだ。
黒田は救援勝利が05年10月7日ヤクルト戦の1勝しかなく、これが先発で200勝目。野茂の先発勝利は199で、
日米通算で先発200勝は初めて。日本の先発勝利は鈴木啓(近鉄)の287勝が最多で、先発200勝以上は11人しかいない。

2016年8月21日の記事。こちらも「先発287勝」になっている。


追記(2016年11月11日)
1975年5月15日の近鉄-日本ハム戦では、板東里視が完封勝利を収めています。
この勝利が鈴木のものとして記録されている資料が存在し、それを参照した結果が「先発288勝」なのでしょうか。

コメント

コメントの投稿

非公開コメント

コンテンツ

■2022年シーズンデータ
 ポジション別wRAAと先発救援別RSAA
 セリーグ パリーグ 各種PF


■選手INDEX(球団/五十音/守備)
  De
  西 他消滅球団
 
 

■打線アーカイブ
  De
  西 他消滅球団
 歴代打線得点力評価[-2020]
 歴代打線守備力評価[-2020]

■投手陣アーカイブ
  De
  西 他消滅球団

■打撃に関する記録
 wRAA通算 シーズン チーム
 wRC+通算 シーズン チーム
 BABIP+通算 シーズン チーム
 K%-通算 シーズン チーム
 BB%+通算 シーズン チーム
 ISO+通算 シーズン チーム

■投球に関する記録
 通算 シーズン RSWIN
 通算 シーズン RSWIN(PF/DER)
 通算 シーズン RSWIN(リリーフ)
 RSWINで見る強力ダブルエース
 RSWINで見る強力勝利の方程式

■守備に関する記録
 守備得点

■球場に関する記録
 一軍PF 2021 2020 2019
 二軍PF 2019 2018 2017
 セPF 得点 本塁打 BABIP
単打 二塁打 三塁打
三振 四球 FIP
 パPF 得点 本塁打 BABIP
単打 二塁打 三塁打
三振 四球 FIP
 球場別 東京ド 後楽園
甲子園
バンド ナゴヤ球場
マツダ 広島市民
De 横浜 川崎球場
神宮
PayPay 平和台 大阪球場
西 メラド 小倉球場
京セラ GS神戸 阪急西宮
ZOZO 東京スタジアム
札幌ド 駒沢球場
楽天生命
日本生命 藤井寺

■RCWINに関する記録
 RCWIN歴代記録[-2020]
 通算 シーズン RCWIN
 通算 シーズン RCWIN(PF)
 通算 シーズン RCWIN(PF/POS)
 RCWINで見る強力打撃コンビ
 RCWINで見る強力打撃トリオ
 ポジション別
 

■傑出度に関する記録
 打撃歴代記録[-2020]
 通算 シーズン 打率傑出度
 通算 シーズン 出塁率傑出度
 通算 シーズン 長打率傑出度
 通算 シーズン OPS傑出度
 投球歴代記録[-2020]
 通算 シーズン 防御率傑出度
 通算 シーズン 奪三振率傑出度
 通算 シーズン 与四球率傑出度

■戦力分析とドラフト評価
 2019年一軍分析
  De 西
 2019年二軍分析
  De 西
 2019年補強・ドラフト評価
  De 西
 2017年戦力分析
  De 西
 2015年戦力分析
  De 西
 2014年戦力分析
  De 西
 2013年戦力分析
  De 西
 2015年二軍評価
  De 西
 2015年ファーム得点PFと選手評価
 打順の組み方を眺める
 2016年 セリーグ パリーグ

■選手の個人評価
 ポジション別に最優秀打者を選ぶ
 2017年 セリーグ パリーグ
 2016年 セリーグ パリーグ
 2015年 セリーグ パリーグ
 2014年 セリーグ パリーグ
 2013年 セリーグ パリーグ
 2016年打者の通信簿
  De 西
 2015年打者の通信簿
  De 西
 2014年選手別守備得点と総合貢献
 総括
 簡易WARの答え合わせ2014
 球団史上最高の4人を選ぶ
    De 西
 

■2018年の特筆記事
 現役打者の2000本安打達成確率を考える
 現役20代選手の通算安打(2018年版)

■2017年の特筆記事
 現役20代選手の通算安打(2017年版)
 「8番投手」は珍しいのか?
 2017年各種パークファクター
 2017広島打線は史上最強か?

■2016年の特筆記事
 2016年における2000本安打の展望
 2016年広島打線、得点力向上の要因は?
 2016年各種パークファクター
 パリーグ野手編成と野手運用の私的評価
 セリーグの犠打減少を考える
 糸井嘉男の成績低下リスクを考える


■2015年の特筆記事
 2000本安打の展望
 違反球の再来?2015年セリーグ
 こちらも違反球?2015年パリーグ
 秋山と柳田が挑む、もうひとつの日本記録
 秋山翔吾の安打記録更新の確率を考える
 「余剰安打」で見る、安打新記録の価値
 山田哲人は何位?二塁手シーズンHR記録
 二塁手史上最高の打撃?2015年山田哲人
 30HRと30盗塁の両立
 三浦大輔、23年連続安打
 谷繁元信、27年連続本塁打
 坂本勇人、7年連続二桁本塁打
 阪神タイガース、得失点差-59で貯金
 2015年はどのくらい打低だったのか?
 2015年各種パークファクター

■考察のようななにか
 □分析結果系
 貯金と得失点差の関係を整理する
 徹底比較 ダルビッシュ有と田中将大
 平成の大投手 三浦大輔
 ポスト松井稼頭央時代の遊撃手総合力評価
 恐怖の8番打者
 稲葉篤紀、現役引退表明
 0本塁打のスラッガー
 シーズン二桁本塁打に関する記録
 20盗塁カルテットに関する記録
 ピタゴラス勝率を用いた采配評価の妥当性
 鈴木啓示の先発勝利に関する疑義
 セリーグの野手世代交代に関する考察
 □分析手法系
 RSAAに守備力補正をかける
 守備イニング推定手法の改良案
 RRFの考え方
 外野刺殺指標試案
 外野補殺指標試案
 NPB版oWAR(試案)

■データ置き場
 通算 シーズン 守備位置別安打記録
 通算 シーズン 奪三振率
 通算 シーズン 与四球率
 通算 シーズン K%
 通算 シーズン BB%
 通算 シーズン wSB(盗塁得点)
 投手のシーズン本塁打記録
 セパ年度別 打低打高早見表
 年度別タイトル・表彰獲得者一覧
 平成時代のポジション別最多安打打者
 日本時代のイチローの全試合成績


■当ブログのデータについて
 Kazmix World
 日本プロ野球記録
 スタメンデータベース
 日本プロ野球私的統計研究会
 を参考にさせていただいています。

■お問い合わせ
 ご意見ご感想、間違いのご指摘など
 お問い合わせは コメント欄 及び
 ranzankeikoku.npbstats★gmail.com
 にお願い致します。(★を@に変換)

Twitter

検索フォーム

訪問者カウンター