鈴木啓示の先発勝利は287勝ではないかという話
- 2016/09/28
- 16:05
鈴木 啓示(日本プロ野球名球会公式ホームページ)
日本記録
・1シーズン10勝以上 15年連続合計18回(1966~1980、1982~1984)
・開幕投手 8年連続(歴代2位)合計14回(1967~1974、1977~1980、1984、1985)
・開幕戦勝利 通算9勝
・開幕戦完封勝利 通算4回(1967、1969、1977、1979)
・先発勝利 通算288勝
・10連続完投勝利(1978/7/29対南海~9/6対日本ハム)
・6年連続奪三振王(1967~1972)
・4試合連続無四死球試合(1978/8/11~24)
NPB最後の300勝投手、鈴木啓示の先発勝利数は一般に288勝とされているのですが、
歴代投手の先発投球成績を調べていて、これより1勝少ない287勝ではないかという疑念が湧いたので、
お世話になっている日本プロ野球記録さんのデータを元に検証を行ってみました。
公式記録によれば鈴木啓示の先発登板は577試合とあり、
試合別のデータでも同数の577試合において鈴木啓示の先発登板が確認できます。
鈴木啓示の所属する近鉄はこの内21試合で相手チームと引き分け、245試合で相手チームに敗れています。
すなわち残りの311試合の中に全ての鈴木啓示の先発勝利が含まれていると考えられますが、
この中の287試合でしか先発勝利は確認できず、残りの24試合は全て救援投手に勝利が記録されています。
1966/06/25 近鉄東映11回戦 近鉄 *4-1 東映 先発:鈴木啓示 ○山本重政
1966/08/24 近鉄南海18回戦 近鉄 *5-4 南海 先発:鈴木啓示 ○長田裕之
1967/07/19 近鉄東映14回戦 近鉄 *6-5 東映 先発:鈴木啓示 ○板東里視
1967/09/06 近鉄南海18回戦 近鉄 *5-3 南海 先発:鈴木啓示 ○佐々木宏一郎
1967/09/09 近鉄阪急24回戦 近鉄 *5-4 阪急 先発:鈴木啓示 ○橋本孝志
1968/04/06 近鉄西鉄01回戦 近鉄 *3-1 西鉄 先発:鈴木啓示 ○板東里視
1968/06/09 近鉄西鉄09回戦 近鉄 *4-3 西鉄 先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1968/09/08 近鉄西鉄26回戦 近鉄 *6-5 西鉄 先発:鈴木啓示 ○川内八洲男
1970/07/12 近鉄東映11回戦 近鉄 *5-4 東映 先発:鈴木啓示 ○佐々木宏一郎
1970/07/29 近鉄東映13回戦 近鉄 *3-2 東映 先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1970/08/02 近鉄南海15回戦 近鉄 *6-4 南海 先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1972/07/18 近鉄西鉄11回戦 近鉄 *5-4 西鉄 先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1972/09/09 近鉄西鉄20回戦 近鉄 *6-4 西鉄 先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1972/10/10 近鉄西鉄26回戦 近鉄 *6-2 西鉄 先発:鈴木啓示 ○清俊彦
1974/06/02 近鉄ロッテ前期10回戦 近鉄 *8-6 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○佐々木宏一郎
1974/09/04 近鉄南海後期10回戦 近鉄 *7-3 南海 先発:鈴木啓示 ○板東里視
1978/04/13 近鉄南海前期02回戦 近鉄 12-3 南海 先発:鈴木啓示 ○柳田豊
1979/05/22 近鉄ロッテ前期06回戦 近鉄 *7-4 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○山口哲治
1979/07/19 近鉄ロッテ後期02回戦 近鉄 13-6 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○井本隆
1981/08/30 近鉄ロッテ後期08回戦 近鉄 *7-4 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○橘健治
1981/09/23 近鉄ロッテ後期12回戦 近鉄 *7-6 ロッテ 先発:鈴木啓示 ○福井保夫
1982/06/28 近鉄南海前期12回戦 近鉄 *5-4 南海 先発:鈴木啓示 ○久保康生
1985/04/06 近鉄西武01回戦 近鉄 *9-7 西武 先発:鈴木啓示 ○久保康生
1985/04/25 近鉄南海05回戦 近鉄 *7-6 南海 先発:鈴木啓示 ○高橋里志
上記の試合以外に鈴木啓示先発で近鉄が勝った試合が存在する可能性ですが、
鈴木啓示の現役時代(1966年-1985年)のパリーグにおける全試合のスコアと勝敗について、
試合単位データの合計値と年間成績の整合性は確認済みなので、勝敗の取り違えは考えにくいと思われます。
次に鈴木啓示に記録されるべき勝利が誤って救援投手に記録されている可能性ですが、
上記の試合でその仮定を行うと、鈴木啓示と各投手の年間勝利数と試合単位データの合計値の整合性が崩れるので、
この方面で記録の取り違えが起こっている可能性も考えにくいのではと思われます。
次に各試合のデータにおいて「鈴木啓示が先発している」という情報が間違っている可能性ですが、
鈴木啓示の先発回数について試合単位データの合計値と年間成績の整合性は確認済みで、
かつ各試合中の選手個人成績の合計値が試合全体のスコアと一致していることから、こちらも考えにくいと思われます。
以上の理由から先発勝利が287勝だと考えると年間成績との整合性がよく取れるので、
一般に流通している数字である「先発288勝」は間違いではないかと考えたのですが、
もうひとつ気付いたのが救援勝利の方がどうも30勝分あるということ。こちらも従来では29勝とされています。
1966/05/24 近鉄東映08回戦 近鉄 *6-5 東映 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1966/07/05 近鉄東京13回戦 近鉄 *5-3 東京 先発:徳久利明 ○鈴木啓示
1966/08/28 近鉄西鉄19回戦 近鉄 *9-8 西鉄 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1967/09/27 近鉄東映25回戦 近鉄 *4-3 東映 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1968/04/09 近鉄南海01回戦 近鉄 *2-1 南海 先発:田辺修 ○鈴木啓示
1968/04/16 近鉄東映01回戦 近鉄 *7-6 東映 先発:田辺修 ○鈴木啓示
1968/04/21 近鉄南海03回戦 近鉄 *5-2 南海 先発:板東里視 ○鈴木啓示
1968/04/30 近鉄西鉄05回戦 近鉄 *4-2 西鉄 先発:清俊彦 ○鈴木啓示
1968/05/24 近鉄東映07回戦 近鉄 *4-1 東映 先発:清俊彦 ○鈴木啓示
1968/06/26 近鉄東京13回戦 近鉄 *5-4 東京 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1968/10/11 近鉄南海27回戦 近鉄 *6-4 南海 先発:板東里視 ○鈴木啓示
1969/06/24 近鉄阪急10回戦 近鉄 *9-2 阪急 先発:バッキー ○鈴木啓示
1970/05/02 近鉄南海05回戦 近鉄 *3-2 南海 先発:岡田光雄 ○鈴木啓示
1970/08/30 近鉄南海10回戦 近鉄 12-6 南海 先発:板東里視 ○鈴木啓示
1970/09/16 近鉄西鉄23回戦 近鉄 *3-2 西鉄 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1971/08/13 近鉄西鉄17回戦 近鉄 *9-6 西鉄 先発:神部年男 ○鈴木啓示
1971/08/15 近鉄西鉄20回戦 近鉄 *3-2 西鉄 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1972/07/02 近鉄阪急12回戦 近鉄 *2-1 阪急 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1972/07/08 近鉄ロッテ11回戦 近鉄 *4-3 ロッテ 先発:清俊彦 ○鈴木啓示
1973/04/29 近鉄阪急前期04回戦 近鉄 *7-6 阪急 先発:佐々木宏一郎 ○鈴木啓示
1973/05/12 近鉄太平洋前期05回戦 近鉄 *9-8 太平洋 先発:太田幸司 ○鈴木啓示
1974/08/02 近鉄太平洋後期03回戦 近鉄 *2-1 太平洋 先発:太田幸司 ○鈴木啓示
1975/07/09 近鉄南海後期02回戦 近鉄 *9-4 南海 先発:太田幸司 ○鈴木啓示
1975/08/27 近鉄南海後期12回戦 近鉄 *6-5 南海 先発:井本隆 ○鈴木啓示
1975/10/04 近鉄日本ハム後期12回戦 近鉄 *3-2 日本ハム 先発:柳田豊 ○鈴木啓示
1976/04/04 近鉄阪急前期02回戦 近鉄 *6-4 阪急 先発:柳田豊 ○鈴木啓示
1976/08/08 近鉄日本ハム後期05回戦 近鉄 *3-2 日本ハム 先発:井本隆 ○鈴木啓示
1977/04/26 近鉄ロッテ前期03回戦 近鉄 *2-1 ロッテ 先発:柳田豊 ○鈴木啓示
1979/04/22 近鉄南海前期05回戦 近鉄 *4-3 南海 先発:柳田豊 ○鈴木啓示
1985/04/29 近鉄阪急05回戦 近鉄 *3-2 阪急 先発:小山昌男 ○鈴木啓示
こちらも年間記録との整合性から、誤りであるとは考えにくいように思われます。
先程の検討で先発勝利の見落としがあると仮定すると、合計318勝となって「合計317勝」が間違いになるため、
少なくとも「先発288勝」か「合計317勝」のどちらかが誤りである可能性が高いと考えられます。
288勝という数字がどこから出てきたのか分かりませんが、名球会の人は一度調べてみたほうが良いと思います。
おそらく救援勝利の一つが誤って先発勝利として集計された可能性が高いと考えますが、
この件に関して事情を知っている方がいれば詳細を教えて下さい。
面白うなので参加してみる。鈴木啓示の救援勝利を数えてみたら自分も30になりました(先発は287)。さて、先発で288勝は正しいのか?詳しい人教えてください。 pic.twitter.com/cmGgTqb4B9
— aozora (@aozora__nico2) 2016年9月27日
私も調べてみましたが、先発287勝、救援30勝でした。 https://t.co/DQZZUbzblP
— たばともデータ (@yic00512) 2016年9月27日
追記(2016年10月1日)
2015年7月13日の記事。NPB-BISでは「先発287勝」になっている可能性が高い?三浦 平松超え先発167勝!2年目からずっと先発 41歳プロ24年目(スポニチアネックス)
≪平松超え≫三浦(D)が今季4勝目を挙げ通算170勝に到達。うち、先発では167勝目(救援で3勝)になった。
先発勝利の歴代最多記録は鈴木啓示(近鉄)の287勝だが、三浦の167勝は野口二郎(阪急)に並ぶ歴代22位タイ。
チームでは平松政次の166勝(通算201勝)を抜く最多記録になった。
追記(2016年10月11日)
2016年8月21日の記事。こちらも「先発287勝」になっている。広島黒田7回無失点、野茂に並んだ日米最多201勝(日刊スポーツ)
▼黒田が日米通算201勝目(日122勝、米79勝)を挙げ、野茂(ロイヤルズ)の日米通算最多勝利記録に並んだ。
黒田は救援勝利が05年10月7日ヤクルト戦の1勝しかなく、これが先発で200勝目。野茂の先発勝利は199で、
日米通算で先発200勝は初めて。日本の先発勝利は鈴木啓(近鉄)の287勝が最多で、先発200勝以上は11人しかいない。
追記(2016年11月11日)
@shinorar2002 @yic00512 @RCAA_PRblog 2つの資料を見た限り、鈴木啓示が勝利したわけない試合で鈴木が勝ち投手となっていて、200勝目と言われているのが201勝目という調べになっております。
— 日本プロ野球記録分析 も 好き (@LNA1977) 2016年11月6日
1975年5月15日の近鉄-日本ハム戦では、板東里視が完封勝利を収めています。@shinorar2002 @LNA1977 @RCAA_PRblog 1975年5月15日日本ハム戦(日生)でプロ野球70年の記録集では鈴木が勝ち投手になっています。実際は板東が勝ち投手です。
— たばともデータ (@yic00512) 2016年11月9日
この勝利が鈴木のものとして記録されている資料が存在し、それを参照した結果が「先発288勝」なのでしょうか。