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2020年に向けた戦力分析 中日ドラゴンズ編 Part2 ~ 二軍の育成状況


本記事では、中日ドラゴンズの2019年時点での強みと弱みを評価して、
二軍の若手、ドラフト、補強内容と合わせて見ることで、2020年シーズンに向けた戦力分析を行います。
この記事は3部構成のPart2で、二軍の育成状況を評価します。


目次
1. 捕手
2. 一塁手
3. 二塁手
4. 三塁手
5. 遊撃手
6. 中堅手
7. 両翼
8. 投手
9. 二軍総評



やりたいこと

ここでは「他チームよりもどれだけ多くの選手を一軍に送り出せそうか」という観点で、各ポジションを見ていきます。
日本プロ野球における年齢曲線の研究から、打撃は27歳、投球は22歳まで加齢による成長が見込めるとされるため[6]、
これより低い年齢に有望な選手をどれだけ抱え込めているかが評価基準となります。

ここでは、他チームと比べてどれだけ有望な選手を抱え込めているかを明らかにするため、
wRC+(打撃による得点創出力)、FIP(投球による失点抑止力)、年齢を載せたグラフを作成しました。
青色の丸が中日の若手、灰色の丸が他チームの若手を示しています。

縦軸がwRC+(FIP)、横軸が年齢を示しており、上に行くほど優秀、左に行くほど若いことを示すため、
左上の点が多いポジションは、他チームより二軍からの選手供給が強く期待できます。

Part1では、2019年における中日の各ポジションの状況から、
弱点である捕手と先発投手の底上げ、および高齢化の進んでいる中堅手の後継者確保が必要であると考察しました。
これらのポジションに対してどのような選手を供給できそうかを中心に、二軍全体を見ていきましょう。



捕手


※グラフの縦軸はwRC+(平均的な打者と比べた得点生産力/平均=100)[7]、横軸は年齢、丸の大きさはそのポジションで出場した打席数を示す。
※BABIP、K%(=三振/打席)、BB%(=四球/打席)、ISO(=長打率-打率)は、リーグ平均と比べて何倍の数値を記録したかを示す。平均=100[8]。


捕手では石橋康太(19歳)、桂依央利(28歳)、杉山翔大(28歳)が起用されました。
石橋は139打席で4本塁打をマークするなど、長打力は高卒ルーキーとしては優秀な水準にあります。
DELTA社のフレーミングの評価も高く[12]、捕手を中日のストロングポイントに変える可能性もある選手でしょう。

ただ、一軍でのアジャストには苦戦しており、捕手の穴を直ちに埋めるのはまだ難しそうです。
他の捕手を見ると杉山は戦力外となったほか、桂も打撃成績は低下傾向にあり一軍抜擢は難しい状況。
来季の捕手の底上げを狙う場合、ドラフトや補強に頼る必要がありそうです。



一塁手



一塁では石川駿(29歳)とモヤ(28歳)が起用されました。(モヤはシーズン中に退団)
石川駿は首位打者を獲得するなど一定の成長を見せましたが、ビシエドとの年齢差やこれまでのチームの戦略を踏まえると、
フロントは一塁以外での起用を想定しているように見えます。起用実績のある二塁三塁、または両翼が候補となりそうです。

中日は21世紀以降、一塁手には外国人選手を配置する戦略をほぼ一貫して取り続けています。
外国人獲得の精度が他球団よりも高いため、この戦略で一塁手で安定的にアドバンテージを築くことに成功しており、
まだ先の話ですが、ビシエドの次でも同様の戦略を取る可能性が高いでしょう。



二塁手



二塁では髙松渡(20歳)、三ツ俣大樹(27歳)が起用されました。
髙松は低三振率と内野安打が持ち味のコンパクトな打者ですが、四球と長打が不足気味なのが弱点。
やや不安定さの目立つ守備も含めて、一軍定着にはまだ時間がかかる見込みです。

一軍主力は阿部寿樹と堂上直倫が30代を迎えるなど、他球団と比べてやや高齢化が進んでいるため、
あと数年で二塁手レギュラーの後継者選びには目途を付ける必要がありそうです。
高橋周平を二塁に戻す手もありますが、三塁守備の高い適性を考えると再転向は避けたいところでしょう。



三塁手



三塁では石垣雅海(21歳)、溝脇隼人(25歳)が起用されました。
どちらも三塁手としてみると打撃成績がまだ物足りないため、三塁手をすぐ供給できる状況ではないものの、
高橋周平が25歳と若いため、世代交代にはかなり長い猶予が与えられています。

石垣は二軍平均レベルまで成長しましたが、三塁手で起用するには打撃をもうすこし伸ばす必要があります。
溝脇は二塁手から三塁手へコンバートとなりましたが、どちらかというと守備が得意な二遊間型の選手ということもあり、
オプションとして三塁を守れるよう経験を積ませるためのコンバートに見えました。



遊撃手



遊撃では根尾昂(19歳)が起用されました。
高卒新人としては長打と四球は標準的な水準だったものの、三振(K%)は二軍平均の1.5倍以上喫しています。
打撃面ではまだまだ課題が多く、一軍定着にはまだ時間がかかりそうな見込みです[13]。

守備面では二軍の守備指標で芳しくない数値が出ており、長期的に遊撃手に留まれるかやや怪しい状況です。
守備でもまだまだ成長が期待できる年齢ではありますが、フロントが外野転向を検討するのも理解できるように感じました。
将来的に中堅手に定着する可能性もありますが、相当順調に成長しなければ大島洋平との直接バトンタッチは難しそうです。



中堅手



中堅では伊藤康祐(19歳)が起用されました。
三振が少ないうえ長打がしっかり出ており、年齢を考慮すればまずまずの打撃内容です。
フロントは中堅手レギュラー候補と見ていると思われますが、根尾と同じ「大島の次の次」の位置付けでしょう。

伊藤康より上の世代から探す場合、武田健吾(25歳)、遠藤一星(30歳)の2人が候補となるのではないでしょうか。
武田健吾はオリックス時代に優秀な中堅UZRをマークするなど、守備面で高い実績があります。
近年では二軍平均を下回る成績が続いているものの、若い時期から長打力のポテンシャルを示している打者です。



左翼手・右翼手



両翼では滝野要(23歳)、渡辺勝(26歳)が起用されました。
滝野は217打席で0HRと長打不足が少々気になるところ。一軍に定着するにはまだ時間がかかりそうです。
渡辺は二軍トップクラスの好成績。起用方針を見るとフロントは中堅起用も想定していそうです。

四球と長打は二軍平均を上回る一方、高BABIPに依存していることは再現性の点でやや不安要素でしょう。
前田智徳や王貞治が代表例ですが、左打ちのプルヒッターはシフトを敷かれるためBABIPが低くなる傾向があります[9]。
渡辺も極端なプルヒッターなので、高BABIPにはフロックの可能性が少々感じられます。



投手


※グラフの縦軸はFIP-(平均的な投手と比べた失点抑止力/平均=100)[10]、横軸は年齢、丸の大きさは投球回を示す。
※K%(=奪三振/対戦打席)、BB%(=与四球/対戦打席)、HR%(=被本塁打/対戦打席)は、リーグ平均と比べて何倍の数値を記録したかを示す。平均=100[11]。


若手投手では山本拓実(19歳)、清水達也(20歳)、梅津晃大(23歳)が起用されました。
中でも梅津は先発投手のマイナス圧縮で最も期待のかかる若手でしょう。
奪三振と与四球は二軍トップレベルであるうえ、一軍でも平均以上のFIPをマークするアジャストを見せています。

山本と清水は二軍レベルでも課題があり、先発投手のマイナス圧縮に貢献するにはもう少し時間がかかりそうです。
マクロの観点で見ても投手陣全体の成績が他チームと比べて傑出しているわけではないので、
二軍からの突き上げだけで先発投手の抱えるディスアドバンテージを解消するのは少々難しい状況かもしれません。



二軍総評



弱点の捕手では石橋が楽しみな存在ですが、一軍定着にはまだ時間がかかりそうな見込み。
先発は梅津がローテに定着する可能性がありますが、マイナスの大きさを考えると頭数が足りない状況です。
弱点解消を短期的に狙うには補強とドラフトを活用する必要がありそうです。

もう一つの課題である中堅手レギュラーの後継者問題については、
1,2年スパンでの世代交代を考える場合、武田健吾、遠藤一星、渡辺勝の3人が候補となりそうですが、
3人の年齢と現在の一軍成績を踏まえるとやや決め手を欠いているのが現状です。

Part3ではこの3ポジションに対して、補強とドラフトでどういった動きが取られたかを考察していきます。
2020年に向けた戦力分析 中日ドラゴンズ編 Part3 ~ 補強の評価と総評



戦力分析

Part1 Part2 Part3 巨人編
Part1 Part2 Part3 DeNA編
Part1 Part2 Part3 阪神編
Part1 Part2 Part3 広島編
Part1 Part2 Part3 中日編
Part1 Part2 Part3 ヤクルト編
Part1 Part2 Part3 西武編
Part1 Part2 Part3 ソフトバンク編
Part1 Part2 Part3 楽天編
Part1 Part2 Part3 ロッテ編
Part1 Part2 Part3 日本ハム編
Part1 Part2 Part3 オリックス編



[6] 岡田友輔ほか(2012)『プロ野球を統計学と客観分析で考える セイバーメトリクス・リポート1』 水曜社
[7] 2019年の二軍wOBA-PFを元に球場補正を行いました。
[8] 2019年の二軍BABIP-PF、K%-PF、BB%-PF、ISO-PFを元に球場補正を行いました。
[9] MLBの研究ですが、左打者の右方向への打球はアウトになりやすいという研究結果もあります。https://tht.fangraphs.com/tht-live/BABIP-by-hit-location/
[10] 2019年の二軍FIP-PFを元に球場補正を行いました。
[11] 2019年の二軍K%-PF、BB%-PF、HR%-PFを元に球場補正を行いました。
[12] https://1point02.jp/op/gnav/column/bs/column.aspx?cid=53563
[13] 高卒1年目に二軍平均の1.5倍以上のK%を記録した選手は2005年以降で10人以上いますが、
   25歳までに規定打席に到達できたのは堂林翔太だけというデータもあります。

コメント

No title

2つほど疑問があるので質問いたします。
まず1つは2軍の順位とプロスペクトの育成はどれほど関係しているのかという点です。中日は一時よりもかなり育成に希望がもてる状況になってきましたが、去年のウエスタンの順位は最下位と1ゲーム差の4位でした。他の球団が中日以上にプロスペクトがいるということなのかもしれませんが、順位とプロスペクトの育成が関係しているのか否か教えていただけたら嬉しいです。
もう1つは疑問と言えるかどうか微妙ですが、1塁手の出場内訳の表が捕手の出場内訳の表になっていると思うので、もしよろしければ訂正して頂けると助かります。

Re: No title

コメントありがとうございます!

>2軍の順位とプロスペクトの育成はどれほど関係しているのか
統計的にどのくらい関係があるかは調べていませんが、理屈で言えば相関関係はあまり強くないと考えています。
なぜかというと、二軍の順位は単に成績だけで決まり、年齢が考慮に入っていないからです。
育成においては成績の他に年齢が重要なファクターとなりますが、二軍の順位には年齢の要素は反映されていません。

これは2012年-2016年に5連覇したソフトバンクが分かりやすい例かと思います。
この連覇は中西健太、塚田正義、猪本健太郎、カニザレスといった二軍で燻ぶっていた中堅選手の働きが大きいですが、
2020年現在、全員が一軍定着できず既にソフトバンクを退団しています。
この期間のソフトバンクにおいて二軍から一軍に輩出された選手も、他チームと比べて際立って多いわけではありません。

この辺りを踏まえると、二軍から一軍に選手を供給できるか判断する際には、
「好成績の」選手をどれだけ抱え込めているかを見るだけでは不十分で、
「若くて」「好成績の」選手をどれだけ抱え込めているかを見るのが大切かなあと思っています。

>1塁手の出場内訳の表が捕手の出場内訳の表になっていると思うので、
こちらご指摘ありがとうございます。
誤って捕手のグラフが表示されていたので訂正しました。
ありがとうございました。

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