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2020年に向けた戦力分析 阪神タイガース編 Part1 ~ 一軍の強みと弱み


本記事では、阪神タイガースの2019年時点での強みと弱みを評価して、
二軍の若手、ドラフト、補強内容と合わせて見ることで、2020年シーズンに向けた戦力分析を行います。
この記事は3部構成のPart1で、一軍の戦力状況を評価します。


目次
1. 強みと弱みの考え方
2. チーム全体の状況
3. 各ポジションの状況
4. どこを優先的に強化すべきか



強みと弱みの考え方

強みと弱みの定量化は「得失点差の改善に何点寄与したか」を基準に行いました。理由は以下の2点です。
 1. 打撃(得点を増やすプレー)と、守備と投球(失点を減らすプレー)を同じ土俵で評価できる
 2. 得失点差が改善すると、チームの貯金が増える傾向がある

日本プロ野球では、「得失点差」と「貯金」が極めて強い相関関係を持つことが知られており、
「得失点差の1/5」で「貯金」をおおよそ近似できるという経験則があります[1]。
よって「得失点差の改善に何点寄与したか」が分かれば「貯金増加にどれだけ貢献したか」も分かります。

一般的な目安として、優勝するためには「貯金20」、Aクラス入りには「貯金0」が必要です。
得失点差に換算して、優勝するためには「+100点」、Aクラス入りには「±0点」が必要になります。
それを踏まえたうえで「得失点差の改善に何点寄与したか」という観点から、阪神の強みと弱みを見ていきましょう。



チーム全体の状況


※打撃・守備・投球は「平均的なチームと比べて打撃・守備・投球で得失点差を何点分改善させたか」を示す。wOBA[2]、UZR[3]、FIP[4]を元に算出。

2019年、阪神タイガースは3位となりました。貯金は+1、得失点差は-28。
野手陣の担当領域(打撃/守備)ではリーグ最大のマイナスを計上したものの、投手陣はリーグトップに匹敵するプラスを計上。
得失点差自体は5位相当だったものの、接戦勝ちがやや多かったため3位に滑り込んだ格好です。

金本監督時代以降、野手陣のマイナスが慢性化しているのが気掛かりな点。
投手陣は野手陣よりも寄与に差が付きにくく、投手陣が単体で+100以上の寄与を記録した例はわずかなので、(1990巨人他)
得失点差を一般的な優勝ライン(+100)に到達させたい場合、野手陣の黒字化が必須となります。



各ポジションの状況


※打撃・守備は「平均的なチームと比較してそのポジションの打撃・守備で得失点差を何点分改善させたか」を示す。wOBA[2]とUZR[3]を元に算出。

捕手が阪神唯一の強みポジションとなりました。
正捕手の梅野隆太郎は優秀な打撃能力に加えて、盗塁阻止とフレーミングの守備も平均以上の評価[5]。
捕手が強みとなった一方、2年連続で他に強みポジションを作ることができませんでした。

弱みポジションは二塁手・遊撃手・左翼手・中堅手の4つとなっています。
二遊間は守備面での赤字が大きく、二遊間を標準レベルで守れる選手の不足が顕在化したかたちです。
左翼手は福留孝介の成績低下が響いたほか、中堅手は近本光司の加入で前年の-50点から赤字を大幅圧縮したもののまだ厳しい状況です。




※投球は「平均的な投手と比較して投球で得失点差を何点分改善させたか」を示す。FIP[4]を元に算出。

先発投手はプラスとなったほか、救援投手は全ポジション中最大のプラスを計上しました。
先発投手は故障者が続出したものの、ローテに新しく加わった西勇輝と髙橋遥人がプラスを稼いでこれをカバー。
救援投手は勝ちパターンの藤川球児・ジョンソン・ドリスがプラスを稼いだうえ、敗戦処理でもマイナスをほぼ出しませんでした。

近年は投手育成が順調に進んでいることに加えて、FAや外国人補強も活用して投手力を上手く底上げできており、
先発/救援と合わせた投手力は阪神の安定的なストロングポイントとなっています。
直近5年間のセにおいて、阪神が投手力で稼いだプラスは巨人に次ぐ2位の大きさとなっています。



どこを優先的に強化すべきか


※縦軸は「平均的なチームと比較してそのポジションで得失点差を何点分改善させたか」、
 横軸は「そのポジションを構成する選手の平均年齢がリーグ平均と比べて何歳高いか」を示す。年齢が高いほど成績低下のリスクが他球団より高い。


得失点差の改善に対する選手獲得の費用対効果を考えると、マイナスの大きいポジションほど狙い目となります。
プラスを出しているポジションを底上げするには、それ以上にプラスを稼げる選手を獲得する必要がありますが、
マイナスのポジションは±0レベルの選手を獲得するだけでも底上げできるからです。

2019年にマイナスを大きく計上したのは、グラフの下方に位置する二塁手・遊撃手・左翼手の3ポジション。
加えて、右翼手はマイナスを計上しているうえに高齢化が進んでおり、更なるマイナスの拡大が見込まれる状況です。
よって、優先的に底上げすべきポジションは二遊間と両翼の計4ポジションとなります。

Part2では、こうした一軍のニーズに対して二軍からの選手供給がどのようなものになりそうかを見ていきます。
2020年に向けた戦力分析 阪神タイガース編 Part2 ~ 二軍の育成状況




戦力分析

Part1 Part2 Part3 巨人編
Part1 Part2 Part3 DeNA編
Part1 Part2 Part3 阪神編
Part1 Part2 Part3 広島編
Part1 Part2 Part3 中日編
Part1 Part2 Part3 ヤクルト編
Part1 Part2 Part3 西武編
Part1 Part2 Part3 ソフトバンク編
Part1 Part2 Part3 楽天編
Part1 Part2 Part3 ロッテ編
Part1 Part2 Part3 日本ハム編
Part1 Part2 Part3 オリックス編



[1] Runs Per Win - 1.02 - Essense of Baseballが詳しいです。得失点差が10点改善すると勝利が1増えて敗戦が1減るため、貯金が2増える計算となります。
[2] wOBAを元に計算した。係数は
1.02 - Essense of Baseballから引用。2017年-2019年のwOBA-PFを元に球場補正を行いました。
[3] リーグ平均が0となるように調整を行いました。
[4] 2017年-2019年のFIP-PFを元に球場補正を行いました。
[5] 野手の守備力をデータから分析し評価する[1.02 FIELDING AWARDS 2019]捕手部門 - 1.02 - Essense of Baseball

コメント

No title

投手陣はメッセンジャー・西・ガルシアという先発三本柱が強力って前評判通りにいかなかったですが、
青柳と高橋という表ローテの選手が生え抜きの中で出て来たのは流石でした。
特に高橋は逆の9勝3敗になってもおかしく無い水準だったので素晴らしかったです。
今年開幕に間に合わないという話はありますけどそれでも今後二桁勝利は十分できる能力はあるかなと。

問題の野手ですがレギュラーで少しプラス稼いでも控え選手でマイナス計上してますね。
特に二塁は糸原が前年より打撃貢献が少なくなった為他の選手でのマイナスが増え、
また糸原の見逃せないレベルで悪い二塁守備と相まって完全に弱点になりました。
レギュラー陣が物足りない水準なのにそれ以外との格差が大きいという首脳陣にとって苦しい状況です。
真弓・和田政権のベテラン重視で生え抜きの若手選手が中々台頭せず、
金本政権以降の即戦力野手路線が一定成果を出しつつも限界を感じます。
金満の分類ながら巨人・SBよりは資本に限りがあるので自前でストロングポイントを作りたい所。

Re: No title

あさん、コメントありがとうございます!
返信が大変遅くなりまして申し訳ございません。

阪神は5年前のローテ投手(メッセ/能見/藤浪/岩崎/岩田)が全員姿を消しましたが、
それでも先発投手陣ではプラスを作れているので、上手く代替わりできた印象がありますね。
若手の離脱が多いのが気になりますが、他チームに対して先発で一定の優位をしばらく築けるのではと思います。

センターラインは控えも含めて層の薄さが否めない状況ですね。
特に二遊間は守備固めで入れるような守備力の高い選手が欲しいところですが、
Part2でも書いたように小幡が良好な守備成績を残しているので、守備要員として一軍昇格させるのもありかなと思います。
(DELTA社が今季から集計を始めたファームの遊撃UZRでも優秀な成績を残しているそうですね)

野手は梅野(捕手)と大山(三塁)が当面はまずまずのプラスを供給してくれそうなので、
あとは投手力をキープしつつ野手の弱点を埋められればAクラスはがっちり固められる戦力にはなりそうですね。
特に早いところ二遊間は埋めてしまいたいところでしょう。

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