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2021年に向けた戦力分析 東北楽天ゴールデンイーグルス編


本稿では2021年に向けた楽天の戦力分析を行っていきます。
大まかに以下のような流れで進めていきますので、よろしくお願いいたします。

目次
 1. チームの貯金と得失点差
 2. 各ポジションの得失点差への寄与
 3. 優先強化ポジションの特定
 4. 優先強化ポジションに対する選手供給の見込み
 5. 総括




チームの貯金と得失点差

まずはAクラス入りや優勝にどの程度の上積みが必要か把握するため、チームの貯金と得失点差を確認します。
日本プロ野球では、「得失点差」と「貯金」が極めて強い相関関係を持つことが知られており、
「得失点差の1/5」で「貯金」をおおよそ近似できるという経験則があります。

一般的な目安として、優勝するためには「貯金20」、Aクラス入りには「貯金0」が必要です。
得失点差に換算して、優勝するためには「+100点」、Aクラス入りには「±0点」が必要になります。
それを踏まえた上で、初めにパ・リーグ6球団の貯金と得失点差を確認しましょう。

20210213_H1.png

楽天の得失点差は+35点でした。前述の関係式からすれば貯金7が想定される得失点差でしたが、
実際にはこれを大幅に下回る借金2となったことでBクラスの4位に沈みました。

得失点差に対して貯金が稼げなかったことは、今季の見通しにはプラス材料となります。
なぜなら「得失点差から期待される借金」と「実際の借金」が乖離したチームは、
翌シーズンには乖離が継続せず、解消される方向に回帰が起こることが経験的に知られているからです。

楽天は昨季と同レベルの野球を継続できれば(同程度の得失点差を記録できれば)、
それだけで貯金7程度は期待できるため、Aクラス復帰を見込める可能性は高いと見てよいでしょう。
一方、優勝を目指す場合には得失点差+100点(貯金20)が目安となるため、更に+65点を上積みする必要があります。



各ポジションの得失点差への寄与

次に、得失点差の最適な上積み方法を考えるために、「得失点差がどのポジションからもたらされたか」を見ていきます。
そのために仮想的な「全てのポジションが平均的な選手で構成されたチーム」を考えて、
このチームと比べて「各ポジションで得失点差を何点分上積みできたか」をここでは評価します。

全てのポジションが平均的な選手で構成されたチームは得失点差が±0点となります。
このチームと比べて「各ポジションが得失点差を何点分上積みできたか」が分かれば、その合計からチームの得失点差を説明できます。

得失点差を改善する手段は、得点を増やす、失点を減らすの2つがあります。
野手は平均と比べて「どれだけ打撃で得点を増やしたか」と「どれだけ守備で失点を減らしたか」、
投手は平均と比べて「どれだけ投球で失点を減らしたか」という観点で、各ポジションの寄与を評価していきましょう。

ここでは打撃はwRAA、守備はUZR、投球はFIPを使用して、「得失点差の改善に何点分寄与したか」を定量化しました。
UZRは1.02 - Essence of Baseballのデータを12球団平均基準からリーグ平均基準に変換して算出しています。
10点以上のプラスポジションを強み、10点以上のマイナスポジションを弱みとして強調しました。

20210228_E2.png

二塁手・三塁手・遊撃手・右翼手・指名打者の5つが強みとなった一方、捕手・中堅手の2つが弱みとなりました。
捕手と中堅手は、昨季に限らず継続的にマイナスを計上している鬼門のポジションです。

楽天は主力選手を複数ポジションに跨がせて出場させる独自の方針を取っています。
これが強みを創出するにあたって上手く機能しており、鈴木大地が一塁手と三塁手、浅村栄斗が二塁手と指名打者、
茂木栄五郎が三塁手と遊撃手、ロメロが右翼手と指名打者に跨りながら好成績を残しました。

20210306_Ep.png

先発投手と救援投手は、どちらも強みとも弱みとも言えない状況となっています。
救援投手は近年ではプラスを計上することが多かったものの、勝ちパターンの瓦解により例年のようにプラスを稼げませんでした。
先発投手は涌井秀章の獲得が成功して、マイナスを計上してしまった2019年からプラス転換を果たしています。



優先強化ポジションの特定

次に、優先的に強化すべきポジションを特定していきます。
なぜチームの弱みと強みを見てきたかというと、「弱み」がそのまま優先的に強化すべきポジションとなるからです。
一般的にマイナスが大きいポジションほど強化の費用対効果が高くなるのがその理由です。

例えば、「±0点のポジション」を強化して得失点差を20点改善する場合、「+20点の選手」を連れてくる必要があります。
しかし、「-20点のポジション」に狙いを定めれば、「±0点の選手」を連れてこれば同じ改善効果を得ることができます。
「+20点の選手」よりも「±0点の選手」の方が手に入れやすいですし、必要な年俸も安く抑えられます。

ここまではそうした理由で2020年時点におけるチームの強みと弱みを見てきたわけですが、
ここから「翌シーズン以降に弱点となりそうなポジション」を考えるには、もう一つ考慮すべきファクターがあります。
それが「年齢」です。なぜなら年齢は翌シーズン以降の成績予測に活用することができるからです。

10代でプロ入りした選手は、デビューとともに勢いよく成績を伸ばしていきますが、
ある年齢になると成長が止まって成績が伸びなくなり、以降は加齢が進むほど勢いよく成績を落としていきます。
つまり、ポジションを構成する選手の平均年齢が他球団よりも高いと、それだけ急激な成績低下が予想されることになります。

ここでは縦軸を「得失点差への寄与」、横軸を「平均と比べていくつ高齢か」として各ポジションをプロットしました。
右に行くほど高齢のため「得失点差への寄与」の悪化が予想されるポジションであり、
左に行くほど若さのため「得失点差への寄与」の改善が予想されるポジションとなっています。
現状で既にマイナスを出していて、今後も悪化が予想される右下のポジションほど優先度が高いと言えるでしょう。

20210228_E4.png

右下のゾーンのポジションが少ない理想的な構成ですが、強いて言えば救援投手が気になるところ。
救援投手については先発投手から人員を回すことでも底上げを狙えるため、
救援単体ではなく先発も含めた投手陣全体を、優先強化ポジションと見なすのがベターでしょう。

また、中堅手は平均年齢は低いものの、現時点で莫大なマイナスを出しています。
正中堅手の辰己涼介が24歳と若いため、今後成績を伸ばすことでマイナスの圧縮が期待できる状況ではありますが、
より確実な圧縮を狙うためには、並行して他の選手を用意する動きがあっても良いかもしれません。

加えて、右翼手と指名打者からはロメロとブラッシュの退団が決まっています。
放置すると穴埋めでマイナスが生まれる可能性が高いため、これらに対しても手を打っておきたいところ。
以上を踏まえると、投手・中堅手・右翼手・指名打者の4つが優先強化ポジションとなります。



優先強化ポジションに対する選手供給の見込み

次に、優先強化ポジションに対してどのような選手を供給できそうかを見ていきます。
選手を供給する手段は、二軍から引き上げる、ドラフトで獲得する、他球団から獲得する、の3つがあります。
これらの手段による選手供給の見込みをそれぞれ確認していきましょう。


二軍からの選手供給

まずは二軍の選手が記録した「得点を増やす能力」「失点を抑える能力」から、二軍からの選手供給について確認します。
ここまで書いてきたように、これらの能力は打撃・守備・投球の3項目によっておおむね説明できますが、
守備については最も高精度な指標であるUZRが手に入らないため、ここでは打撃と投球のみに着目していきます。

ここでは「打撃で得点を増やす能力」はwRC+、「投球で失点を抑える能力」はFIP-を使って定量化します。
どちらも二軍平均を100として、打者の得点創出力と投球の失点抑止力が平均の何倍かを示します。
wRC+が150なら二軍平均の1.5倍の得点創出力を持つ、FIP-が50なら二軍平均の0.5倍に失点を抑える能力を持つことになります。

以下では縦軸をwRC+およびFIP-、横軸を年齢として各選手をプロットしました。
過去の統計的な研究からは、打者は27歳まで、投手は22歳まで成長を続ける傾向があることがわかっています。
現状で好成績を残していて、かつ成長も期待できる左上に位置するのが、一軍への台頭が期待できる選手(プロスペクト)となります。

20210228_E5.png

優先強化ポジションで左上のゾーンに入っているのが、外野手の小郷裕哉です。
小郷は二軍成績がずば抜けているわけではないものの、一軍ではアジャストを見せて外野手の平均以上の打撃成績を残しています。
外野守備についても比較的得意としており、早ければ今季中にもレギュラーに定着する可能性がありそうです。

加えて、一塁手の岩見雅紀が、指名打者で起用する候補となりそうです。
年齢は26歳と若くないものの、打者地獄の二軍本拠地を持つ楽天の選手としては特筆すべき長打力を有しています。
一軍へのアジャストにはまだ時間がかかりそうですが、指名打者での起用に耐えうる打者に成長する可能性もあるでしょう。



ドラフトによる選手供給

次にドラフトで指名した選手について見ていきましょう。
ここでは楽天の指名選手と、パ・リーグ各球団の指名選手をまとめました。
また、育成選手は1年目から編成に影響を及ぼすほど一軍の試合に出場するケースは稀なので、ここでは記載していません。

20210228_E6-1.png20210228_E6-2.png

優先強化ポジションに対しては、投手の重点的な選手獲得が行われました。
大学No.1投手との呼び声の高い早川隆久を手始めに、ドラフト1位から4位までを使って即戦力投手を獲得しています。
当年のドラフトにおいて投手を指名した人数と割合は、どちらもパ・リーグで最大となっています。



補強による選手供給

最後に他球団から獲得した選手を見ていきましょう。
こちらも育成選手は1年目から一軍の試合に多数出場するケースが少ないため、ここでは記載しません。

20210228_E7.png

優先強化ポジションの投手に対しては、先発投手の田中将大、救援投手のコンリーを獲得しました。
8年ぶりに復帰した田中はオープン戦でも衰えを感じさせない成績を残しています。
渡米前の水準とまではいかなくても、先発投手をチームの強みに転じさせる活躍も見込めるのではないでしょうか。

一方、野手ではユーティリティーのディクソン、外野手のカスティーヨを獲得しました。
年俸はディクソンが1億円、カスティーヨが6000万円+出来高で、悪くても準レギュラークラスの活躍を期待したいところ。
過去の起用実績から中堅手での起用は難しいでしょうが、右翼手か指名打者での起用が見込めそうです。



総括

優先強化ポジションは投手・中堅手・右翼手・指名打者の4つ。
特に投手に対しては田中将大の復帰、ドラフト1位の早川隆久の獲得など積極的な手が打たれました。
先発が充実したことを受けて松井裕樹を救援に固定する動きもあり、投手陣全体で一定の底上げが見込めるものと考えます。

中堅手には2019年にレギュラーでプラスを計上した辰己涼介に加えて、
一軍へのアジャストを見せている小郷裕哉と、年齢的に成長の見込める若手が揃っている状況です。
彼らが成績を伸ばすことである程度のマイナス圧縮が期待できると見てよいでしょう。

一方、不安が残るのが右翼手と指名打者かもしれません。
ロメロがプラスを大きく稼いでいただけに、その退団によるダウンサイドリスクがどうしても否定できません。
優勝を狙う上では、新外国人と若手でここをどれだけカバーできるかが鍵となるでしょう。



2021年開幕時の戦力分析はこちら
読売ジャイアンツ編
阪神タイガース編
中日ドラゴンズ編
横浜DeNAベイスターズ編
広島東洋カープ編
東京ヤクルトスワローズ編
福岡ソフトバンクホークス編
埼玉西武ライオンズ編
千葉ロッテマリーンズ編
東北楽天ゴールデンイーグルス編
北海道日本ハムファイターズ編
オリックス・バファローズ編

2020年の打撃成績と投球成績の詳細はこちら
2020年パリーグ・ポジション別wRAAと先発救援別RSAA

昨年の戦力分析です
2020年に向けた戦力分析 東北楽天ゴールデンイーグルス編 Part1

コメント

No title

12球団の戦力分析、お疲れ様でした。すべての球団の現状だけでなく未来まである程度可視化でき、とても有意義な記事だったと思います。

と同時に可視化したことで改めてソフトバンクと巨人の圧倒的な優位性(現有戦力・育成状況ともに順調)がはっきりと示され、今後のリーグ戦に混戦やダークホースを期待するのが難しくなってきたなあ・・・と感じています。

歴史的なレベルの選手である柳田と坂本が一線を退くまでは、他チームはセンターラインの差に苦しみ続けることになるでしょう。

そんな中で両チームの牙城を脅かしそうな楽天には大いに期待するところです。なにしろ浅村、鈴木大地、岸、涌井と新戦力がズバズバと当たる補強巧者っぷり。そして生え抜きでも茂木、小深田、辰巳、田中和基など補強しにくいセンターラインに若い人材がおり、今後大きなプラスを稼げそうなポテンシャルを持っています。

まだまだソフトバンクとの差はありますが、柳田が故障や不調に陥った場合に、そのチャンスを逃さないだけの戦力は整ってきている。あとはセンターとリリーフ次第でしょう。捕手はなかなか出物がありませんが、散々噂されている巨人との再トレードがあるのかにも注目しています。

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